第77回 夏の終わり<前半>
たいした信心もなく、ご縁に導かれて、夫を仏という形でこの世からあの世に送って18年。花も酒も好きだった夫が仏様にデビューした頃は、仏壇に切立の蘭をいけ、名産酒を並べた。今も四季の生花は絶やさないが、ベランダの千日紅(別名・千夏草)を供えることもある。お酒は記念日だけ。お仏壇に手を合わすのも、酒が飲めない私とワンコだけになったから、しゃーないわ。
けど、命日に誕生日にお正月…お盆なんて3日間も飲み放題。まあ、酒はほどほどに、健康な仏(笑)として私たちを見守ってちょうだいな。
「人は死んだらどうなるのかなー」と某大学・哲学科卒の夫のつぶやきに、悪妻から強妻に化した今呟き返す。「人は死んだら…はい・それまでよ♪」
加えて、患者から遺体になった瞬間、その体をどう扱うかは、家族や身内と呼ばれる者に委ねられるしきたり。あんた(夫)、こんな私に託してよう逝きはりましたなー。
あの当時は、生前に立派な経歴の持ち主は盛大なお別れの式を催すことが多くて、あほぅな私もお悲しみ商法に引っかかったくち。
まっ心静かに故人を偲び、心穏やかでない遺族に寄り添う葬儀担当者に出会えたから、よしとした。今はお別れの形も人それぞれなんだけど、やっぱりそれでも悲しい時は、人の存在が心の拠り所。ここはAIちゃんでは事足りないと思う。そういえば、友人の娘さんが葬儀会社に就職希望していたっけ。悲しい場面で人をきちんと支えてくれた人の顔は心に残る。彼女もきっと人に感謝されるお顔になっていくんだろうな。
18年間、まったく学ばず、進歩せず、ただただ無駄に時を過ごした私ではあるが、人との一瞬一瞬の出会いに支えられて生きている。お盆になると。手を合わせ思い浮かべるお顔も年々増えるが…。
そういえば、今年のお盆はうちのワンコがよく鳴いた。ほとんど無駄吠えしないワンコなので少し困った。ちなみに私は霊やら祖先やら魂やら見たことがない。まっ困った時にだけ登場してもらって…。「パパは優しい人やった。友達のりっちゃんはお歌が上手やったんよ」と、隣に座り話しかけ頭を撫ぜた。するときょとんと上目遣いになり、私の語りに耳を傾ける。
「誰がいるん?」
わお盆は、あの世とこの世が少しだけ混ざるお祭りの三日なのかもしれないな。