第74回 母と娘のバースディA
―マイ バースディー
娘の誕生日もここ数年前から母は忘れている。いっそ障害(脳性麻痺)の娘・私を産んでしまったことも忘れてくれれば、とも思う。だが、彼女は私を世に送り込んだ罪悪心は持ち続けそうだ。きっと命尽きるその日まで…。
でも、母が私を夫に先立たれた障害を持つ可哀そうなだけの女と憐みの目で見ようと。「わたしゃ健常者の優しいあんたの婿さんが大好きやった。なんで死んだんや」と号泣されようと、私は私。世の中に出続けてやる。誰に祝っていただくことなくとも、今日は私のハピバスデー。
息子もきっとこう思っている。「おかんがどう思おうと、俺は俺。俺も生きていて辛いことも悲しいことも、理不尽なこともあった。けれど、楽しいことも嬉しいこともあった。これからはパートナーと、この世に送り出された命を繋いでいきたい」と。
息子が大好きなおかんは、正直、お嫁ちゃんが羨ましくて仕方がない。
「千夏さん。姑業はおんなの最期の人生修行なんよ。ほんと男の子って結婚したら実家に帰ってこないよね。淋しいよね」先輩姑たちに肩を叩かれ
「そうかー。ここからが女の見せ所なのか」と
理想のがぎぐげご姑
がみがみ言うと ギスギスするから グサッと来ること言わないよ 元気に仲良くとだけ願い ごそっと手土産渡す
こんな姑、いつまで続く( ´∀` )わっはっは
Facebookで呟く。まあ、まわりの素敵な先輩姑の足もとにも及ばない歩みであるが、こども業に加えて姑業もぼちぼちと勤めておる。
45歳で夫を見送り、62歳で息子を婿に出し、父母は95歳と93歳で健(?)在。4歳のワンコを扶養中。63歳の独身。無職。これ、婚活のプロフィールなら、書類選考でアウト(@_@))やん。
えっ肝心なことが漏れている?
まあまあ。そこは会った時のお楽しみ。この派手な見た目にドハマリする方がいるやもしれぬし。いないかも知れないし・・・うふふ。
「63歳に何を望むか(・・?)」どこかの神様に聞かれ、
「脳性麻痺をやめさせてほしい」「死んだ夫を生き返らせてほしい」なあんて答えたら「お前の命と引き換えなら」と声がふりそうだ。
なので「手首にできたガングリオン(脂肪種)が、自然に消えてくれれば、特段望みはございません。私、幸せですので」と応えよう。自分でもとめたメロンが乗ったケーキを頬張りながら…