第53回 いっしょに行こうよ
ワンコは汗をかかないので、夏は代謝がおちる。地熱で肉球が焼けるので、夏の炎天下の散歩はご法度。加えて、うちはビビリの性格ゆえ夏の夜の冒険など楽しめない。まぐれに飼い主の私が早朝起きた時だけ「しゃーないなー」という顔で外に一緒に出てはいた。でも、そのあとは朝寝。だけでは足りず昼寝に夕寝。結局今夏は私もワンコもごーろごろ。
で、気づくと秋風が吹き、あれれっ私たち少しまるーくなった(・・?
ワンコは背中のお肉で首輪がはめにくくなった。寝姿は干し狸みたい。
私は腹にいついた肉でズボンのボタンがはめにくい。まるで古だぬき。
ちっちとまずいぞ。このぽんぽこコンビでは健康的な老後を家で迎えることが厳しくなりはしないか(・・?。共に逝けずとも、せめて、どちらかがどちらかをこの家で見送れるようにしたいではないか。老犬ホームと老人ホームに引き裂かれる末路では悲しすぎる。
と、大げさに聞こえるだろうが、細い手足のトイプードルにも、曲がった体の私にも体重増加は足腰に負荷がかかる。やばい問題なのだ。
冬が来る前にダダダダイエットだ。行くぜ!と飼い主はいきまくが、ワンコは玄関で尻込みする。
「おいおい、キーボードに触るのも飽きたんか(・・あたい、つっかえながらの同じメロディでウトウトするの嫌じゃないよ。その大きなレジャーシートどこで広げるん?」
と言いたげなお口にカロリーオフと銘打ったおやつを一つ。「あっあたいとしたことが・・・」とひょいとカートに乗ったもののエレベーターでは不機嫌な顔。
案の定、ドックカートから外に出ない。マンション下で「りかちゃん、また嫌がってるの?」ご近所さんからお声がかかる。「そうなんです」飼い主は頭を掻く。「カートでゆらゆらしてるのが好きなんやね。でも、涼しくなったから少し歩いておいで」と優しく背中をなぜられカートを斜めに軽くリードを引かれると、お目目くりくり。「はい。私いいわんこでーす」てな感じで、するーと出てきよる。で「行ってらっしゃい。かわいいね」なんて言われてトトトトトーと歩き出すんだ。こいつは。
「あんた、ほんまに生き方上手やな。まあ、いいことやけどな」飼い主の嫌味など聞かぬふりで、お尻フリフリ。からの排泄行為。そして「はい散歩終了」で20歩ほど来た道をひき返そうとする。
「おいおい、少しは歩こう。ご近所さん手を振ってくれてはるやん。徒歩3分カップラーメン散歩に付き合え」
排泄物処理班の要求も聞き入れてやろうという態度で歩く。おーい、嫌々か。しっぽが垂れ下がっとる。ちなみに「ふふふーん♪」と散歩を楽しんでいる時は、しっぽが上がる。
いつものコンビニ前。人との幅が広くとれる所ではげしい風が舞う。突風につき撤収!。昨日は雨につきすぐに退散した。まったく…おんな(おとこ)心と秋の空とはよく言ったものだ。
だから言うたのに…って顔で、リビングの陽だまりに入るワンコ。就寝時はベッド下の自分の床に入る。が、飼い主寝付けば…おっおもい?!
主「ベッドのど真ん中はあかんわ。寝返りどころか身動きひとつとれへんやん。
明日はあらしが吹いても歩くでー」
わんこ「ドッグカートにつかまっておひとりでどうぞ」
と、秋の夜長は過ぎるのだった。
