第37回 赤いワンピース
還暦だー。・イェーイ。といってもなんにも変わらない。のだけれど…
周囲のみなさん、よく耐えてくださいました。先端恐怖症につき、鍼灸治療のほそーい鍼にびびり続け…。採血時の注射針なんて見ただけで恐れおののき「はい、福本さん力抜いて。大丈夫。ひひぃひひぃはー」とまあ、内科なのに産科みたいですねと待合室の人に笑われる。手足がアンバランスについているので、家の中でもずっこける。いつもはごにょごにょと聞こえにくい声なのだけど、そんな時だけ何事か?と思うような大きなお声が出ちゃう。
あれやこれやの大騒ぎ、これからも許してくださいませね。
うっかりすっかりひとりで生きて15年。
病床の夫に「私も連れていってー」って言うたのは誰やねん。最近では四季の果物なども仏様を差し置いて、真っ先に自分のお口に入れる始末。わちゃちゃーこんな熟女にお仕上がり。
「優しいお胸」も「どこでもドア」も「打ち出の小槌」もなくても、なんとかなるもんです。
はい。だから、今は悲しいそこのあなたも、大丈夫! 泣くだけ泣いてくだしゃんせ。
泣くのに誰の遠慮が要りますものか。気負うことなく気張ることなく気取ることなく泣いていい。
人生の中で、そんなに泣くことはそうそうありゃしないんだから。それに他人は、あなたの涙のお顔、案外冷静に見ている。まあ、泣いている時、そばにいて温かい言葉の一つでもかけてくれるのは、お と も だ ち。もしくは詐 欺 師。そこの見極めだけはしっかりね。でも、それもこれも縁のもの。楽しく騙してくれるお相手は恩人となるわけだしね。(うふふふ)
くわえて、おともだちとは極力シンプルにお付き合いしたいもの。でもさ、長く生きてる分、なんとなく相手の求めていることがわかる。本音だけで人と付き合えてた若い頃が懐かし〜い。しかし、身に着けてしまった本音と建て前は誰もが持つ生きる術。これもまた大事だと私は思いますよ。
コロナ禍でおともだちとも会えなくなって、互いの暮らしぶりも思いも隠れてしまった。マスクの下のお顔もお腹の中の一物も見えないよー。
コロナ禍、社会は変わった。戦争に物価高に異常気象。世の中は先行き真っ暗感を出している。そんな中、なくなっていく仕事にとって代わって怪しげなビジネスも多々出現してるのとちゃいますか。ワンコとの静かな生活を送る私でさえ、スマホやパソコンに不要な情報がわんさか送られてくるもの。逆にリアル社会で生きている人たちは免疫ができているから大丈夫なのかしらね。
そんな中で「あんたは騙されていても気が付かないだけ。一番の幸せ者」と言うぼおーっと生きることを支えてくれる友人との還暦祝い。ワンコを連れて、赤いワンピースを着て、女3人カンパーイ。背負っているものも失ったものも手放したいものもそれぞれだけど、ますます熟していこうぜ!いや、枯れていこうぜぃ(・・?