第70回 大丈夫ですか?
「大丈夫ですか?」
日本で生きている大概の日本人は、少しお困り気味な人にはこう言うが、本当に困った人をみると遠巻きに通り過ぎる。だって、面倒なことに巻き込まれたくないもの。
私もそうです。(m´・ω・`)m ゴメン
「大丈夫ですか?」は大丈夫な時にしか、かけていただけない言葉なのだ。
いや、相手に大丈夫だと言ってほしい時に使うのかもしれない。
経験は豊富だが、少々心配症のヘルパーさんに出会った時、この「大丈夫ですか」攻めにあった。人を思いばかる優しさも聞く耳も持つ彼女だから、私はこう切り出した。
「大丈夫ですよ。だから、お風呂でこの通り。すっぽんぽん。あなたも大丈夫ですか? きっと不安なんやろね。だから、私に大丈夫ですと言ってほしいんやね。わかりますよ。私があなたの立場ならね。でも、介護者に大丈夫ですか?と問われれば、こちらは、はい、大丈夫ですと言うしかないんですよ。だから、その大丈夫ですか(・・? を具体的に伝えていただけませんか。パーマ屋さんなら、お湯は暑くないですか(・・? 水圧は?お首苦しくないですか?といわれますよね」
うわー私って、なんちゅう、やな障害者?!はははははー
だって私。美容師じゃないから…なんていう言葉が返ってきた時には、また言葉を重ねようと思いながらひと呼吸すると。
「いやー目から鱗です。そうですよね。長い間ヘルパーをやってきたんですが…でも確かにそうだわー」と頷かれる。
構築された人間関係も一瞬に崩れ、なくなるのが世の常。
だから、何より先に信頼関係を築きませんか?なんて解いてみても「ちょっと何言ってるかわかりません」と返しが来ても仕方がないのに。
この時の彼女は違った。
翌週、彼女の口から、「大丈夫ですか?」は消えていた。
でも、考えてみると、私もワンコに言っちゃっている。
突然走り出すワンコに「おーい大丈夫か?」急に鳴きだすワンコに「なに?大丈夫」ゲホゲホむせているような時「大丈夫でっかー」って。
(あんたなー大丈夫大丈夫(・・? ってうるさいねん。心配するなら犬のこと勉強しろや)
と言いたげなワンコのしれーっとしたお顔。で、私「そや!」と気づきました。
「ヘルパーさんにしたら、私もワンコみたいなもんか? 言語障害でなに言ってるかわからんし、譲り合いとか話し合いとかできない存在に思われてるんや」見つめる飼い主から視線を外し
「けっ。あんた、今まで知らんかったんか」ワンコはうつむく。
「ううっ悲しいなーうちら人のことわかってるのになー」
撫ぜようとする飼い主の手を払いのけ、
「あたいはなー。あんたはまだまだ勉強不足やわー。人間のことも、犬のことも。加えて言うたら、ヘルパーさんの人好きで家事得意なんていうお顔もよう観てみぃ。時代は令和やで」「えっ?」「動物が苦手なペット店員もペットシッターもいるもん。時間・場所・マネーで仕事を決めるんや。けど、それでもええやん。うちに来てくれている人は大事にせな」
うううー( ;∀;)
「おいおい、なに泣いとんや。大丈夫か(・・?) 」きょとんとした表情を残して立ち去るワンコ。
おいおい、ここは慰めるとこやろ(飼い主・心の叫び)