第59回 夫婦喧嘩は犬も食わず

「旦那が死んだら、毎晩でもちぃーちゃんのところに来るのに」10年来、姉のように慕っていたヘルパーさんは言った。そして去った。
「体調が悪いのはだんなや・私は好きなこの仕事を好きなだけさせてくれたら何も望まないのに」去年から週半分・夜2時間の通い妻ヘルパーさんは言う。
「別れたい。どうしても無理」何も持たずに家を空けて一年。互いの安否確認をしていた古くからの友人。知らせが途絶え、元気かなと思いきや「旦那のところにもどりました」とlineが入る。急転直下。いやいや急転上昇?のメール文字には正直驚いた。
でも、同時に彼女らしい選択にほっと胸をなでおろした。「調停」や「弁護士」などの言葉も、彼女には似合っていない気がした。妙に頑張っている感がしんどそうやったもの。

みんなみんな「のろけたい(愚痴りたい)」だけやったのね。ほんまに別れたい人は。何も言わずに離婚届けを出しておる。ちなみに人は別れを心に決めると、愚痴も出ないそうだ。
別れは出会う8倍のエネルギーがいると昔なにかの記事で読んだ。
少しのエネルギーを使って得るものが大きければ、愛の大小はおいといて、体調不良の原因となる夫との結婚継続の道もありだわさー。

私は、自分の意思なんて全く聞かれずに突然置いていかれた死別組。だから「死んだらええねん」「消えてほしい」「心の底から別れたい」という愚痴り(のろけ)節は出ない。 
寂しさに悶えて「仏壇ぷっ壊したろか」ぐらいの怒りはたまに出るけれど(笑)

息子の彼女さんも、結婚して「お嫁ちゃん」になった途端、息子との生活をのろける(愚痴る)
「おかあさーん・聞いてくださーい」って廊下を小走りして、リビングで膝を突き合わせる。

この姿、夫に見せたかったな。
私にはこんな時間はなかったもの。私(障害者)との結婚は猛反対したけれど、姑は決して嫌いな人ではなかった。ただ「完璧な息子」だと信じて疑わなかったお義母さんに、夫の愚痴なんて言えなかった。
3年付き合って、あれもこれも知っていたはずが、結婚して「ありゃりゃ・それってありなん?」と10年ぐらい首を傾げていたこともあった。告げればよかったかな。「おかあさーん 聞いてくださーい」って。

「お嫁ちゃん」が好きなワンコも、何時でも両手両足あげんばかりに出迎える。
が、ご挨拶が済めば「はい、あとはおかんにバトンタッチ」ゴロンと寝る。

「夫婦喧嘩は犬も食わず」か!?あんた、ほんまに生き方上手やな―。

でもでも、お嫁ちゃんの愚痴の向こうにリアルな息子の姿が見えるのよ。
いつまで続くかはさておき、お嫁ちゃんとこうして話していると「完璧な息子」でなく「未熟者の息子」でよかった?とさえ思う。「ええあんばいに育ったかもよ。俺は19歳までのあいつしか知らんけれどな」写真になった夫は笑っている。あのさー19歳から、あいつは結構いろいろあったんよ。今も…「あんたって、ほんま〇〇〇やな」私は沸き立つひとことを堪える。死んだ人とは夫婦喧嘩もできひん。ずるいわー。

 

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第40回『60歳になるとできないこと その1』
(2022年10月12日)
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第28回『募金活動のなぞ その1』(2021年12月6日)
第27回『感動ポルノって? その2』
(2021年11月18日)
第26回 感動ポルノって? その1
(2021年10月29日)
第25回 働き方改革って?(2021年10月15日)
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第23回 私、めっちゃ欲張りでして…(2021年8月27日) 
第22回 「福本さん」と呼ばれた場所(2021年8月12日)
第21回 働くご縁がございました。(2021年7月26日)
第20回 働かない人生からの…(2021年7月8日)
第19回 専業主婦というお仕事 その4 私たち、こうして育てられました
(2021年6月15日)
第18回 専業主婦というお仕事 その3 こうして母になりました
(2021年5月31日)
第17回 専業主婦というお仕事 その2 こうして福本千夏になりました
(2021年5月11日)
第16回 専業主婦というお仕事 その1 永久就職ではない
(2021年4月27日)
第15回 ロミオとジュリエット(2021年4月13日)
第14回 乙女の経験8 ○○家を継ぐ子を産んでくれさえすれば
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第13回 乙女の経験7 そこに愛はあるんかぃ?(2021年3月11日)
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第11回 乙女の経験5 鏡越しのオチンチン(2021年2月13日)
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第7回 ファーストキスもラストキスもご用心あれ(2020年11月30日)
第6回 母と暮らせば その3(2020年11月16日
第5回 母と暮せば その2(2020年11月2日)
第4回 母と暮せば(2020年10月15日)
第3回 悲しみごとも よろこび事(2020年10月1日)
第2回 この夏は(2020年9月14日)
第1回 初めまして(2020年8月28日)

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福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

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