第63回 餅は餅屋
ワンコと一日一日を生きるのが精いっぱいの夏。年々体の動きが悪くなる飼い主を心配そうに観察するワンコ。かたじけない。
だが、しかし〜足腰の痛みに耐えかねて飼い主が這い出すと、お顔めがけてホップステップジャンプ。ルンルンルンペロペロペロ。
浅はかな飼い主・3年前には自分の足がこんなにもフリーズするなんて想像していなかった。だからワンコと家族の絆を結んだのだ。加えて、あんたがこんなにデカく(ごめん・成長だ)なるとは思ってなかったし…。バランスが命のジェンガ状態の体を操る私。500ミリのペットボトルが鞄に入っただけで崩れてしまう。「大きくなっても3キロまでですよ」なんて店員さんの言葉なんて嘘八百。そりゃー小さい時もあったけど、今や5キロ手前のチョイ(トイ)デカプードルは抱けやせぬ。
だけど人生、なんでもやっちまって、気づき・知ることばかり。
要は、やっちまったことを楽しめるか。
で、やっちまいましたよ。トイレリフォームも。
車いすでの生活を見据えた全面リフォームもちーぃと頭をよぎりましたが。
ここは、6月から歩行訓練にお付き合いいただいている理学療法士さんにご相談。
「部屋の移動は歩行器がある。這える。ので手すりは要らない。お風呂は…渡し板も手すりもある。洗面台は使っとるん?」と、化粧っけが全くない私の顔を覗きこむ。
「トイレは手すりが必要になってくるよ。今もあった方がいいのと違います?ちょっと座ってみて。僕、手すりになりますわ」両腕でL字をつくりトイレの壁に沿わす。
楽に立ち座りができる。やっぱり餅は餅屋!
台所の水はけが悪く、ディスポーザー(生ごみ粉砕機)を取り換え、水回り屋さんとも、ご縁ができた。ウォッシュレットも使えず、タンクはカビだらけのトイレをみせる。
うちのトイレタンクは壁に囲まれて見えないようになっている。20年前はきっとこれがおしゃれだったんだろう。隠されたタンクのことなど気にも留めずにいた。が、お家時間が特に長かった4年前、カビが目にふれ出した。この時もリフォームを勧められた。が、希望メーカー以外の旧式モデルを「コロナ禍につき品薄でこれで最後の商品です」と工務店2社とも高い見積もりを出してきた。
「ほんまに品薄なん?コロナ禍につき工務店結託でお高いお値段」キャンべーン中とちがうんかい!リフォームも楽しくやっちまうもの。業者に「やられたら」腹が立つ。友人協力のもと、カビをできる限りそぎとり、タンクにふたをしてしのいできた。
「あの時はね…でもさすがにその金額はおかしいですわ。今、うちではその6割ぐらいでこのくらいのものがご用意できます」水回り屋さんは希望メーカーのパンフレットと電卓を手にサクサクと話を進めていく。コンパクトなタンク・手洗い場なし・ウォッシュレットとL字型の手すりを付け、壁紙・床を張り替えシンプルで清潔なトイレになった。「自動開閉は掃除がしづらい。私一度壊しちゃって」というヘルパーさんの申し出があったのでやめた。自動洗浄もブツを流さない習慣がつきそうなのでいらないと伝えたはずが、今時のトイレはブツを流し掃除までしてくれる。「ご親切にどうも」とトイレを出ると、ワンコが「なに言うとん」と顔を挙げる。
これが適正価格かどうかは、購入者が「餅は餅屋」と思えるかどうかだ。