第56回 押しロス
今年のカレンダーは1月がなかった?と思うぐらいの速さで月日が流れ、
節分を迎えた。去年のように寿司を巻く気力もなく、コンビニで手のひらサイズの巻きずしを夕食に購入。どないしてん?私。退職後は日々のやるべき事を最小限に低空飛行で生きてはきたけれど、同居犬も呆れるこの堕落っぷり。
バッハ先生は寛大だから大丈夫。寒いのを理由にオルガンのお稽古も休み、しばらくキーボードにも触れていなかった。が、バッハ先生は恐ろしくもある。一度弾けるようになった曲も弾かずにいたら指が忘れてしまう。「私は上達を望まぬが、指を動かす継続は求む」と、バッハ先生のどの楽譜も言っている。
だけど、ふむー。体の真ん中がぐにゃりとし、どうにもこうにも指先にも力が入らないのだ。なれど、かつて経験した「鬱」らしき時でもなく、病の兆候もない。
心の声に耳を傾ける。
原因は「押しロス」
事の初めはお正月。彼女さんと息子を前にして先陣を切って「結婚は?」という言葉を口にしてしまった。あーあお節介婆がやめときゃいいのに。そりゃーね。彼女さんとはいついつまでも仲良くしてほしい思いに嘘はないのよ。でも頭の片隅に母の存在も置いてね。というのが本音。母という生き物はまっこと複雑です。
自分たちの若い頃を思い起こせば、親の本音だけを想い図れる良い子は、恋からも結婚からも縁遠くなることがわかるのにね。
で、へルパーさんも訪問鍼灸師もいない三が日は、気疲れもお互いさんで、彼女さんと息子と私とで過ごした。ワイワイと嬉しいんだけどね。
疑似親戚やら疑似息子の支えで、ワンコとの静かな暮らしに慣れている私は、お2人さんの会話にもなかなか入れず、どうにもこうにも身の置き場がないのよ。
いぃぬは喜び家駆けまわり、はぁは(母)は楽しいふりをする(-_-😉
元旦に起きた地震は「私たちにも明日がないかもしれない」ことを迫った。わが人生に悔いなし。気かがりはワンコだけ。まあこいつは生き方を心得ておるから大丈夫。残るはボロボロジャンバー姿の無頓着息子。「えっその格好で結婚指輪を見に行ったん?店員さんもついてくれへんわ」と、一日の朝は笑い飛ばしていたが…
「防寒着ひとつで助かる命もあるかも」と翌々日彼女さんと話し「最後のお年玉・栄太郎(息子)リニュアル企画」と称しアウター着を求めに出かけた。
この時はファッショナブルな仕上がりとなった息子が、早々にプロポーズするとは夢にも思っていなかった。
が、数日後、妙な出来事が・・・
平日のお昼過ぎ、勤務中であろう息子が着替え一式ひっさげて帰宅。お風呂に入って、うち当てに届いたなぞの長い箱を抱えて、風のように去った。
まっまさか同居人に追い出されたか?と問いを一瞬で封じてしまうくらいの眩しいオーラを出していた。カッコイイ!あれがプロポーズ直前の33歳男児やったんや。
節分に、彼女からプロポーズお受けしましたと吉報が入る。
来週は両家初のお顔合わせである。絶えず動く体やお顔はみなさん了解済みらしいので手入れ不要。でも、2か月以上放置している髪のカット予約はせなな。