第69回 災い転じて福ちゃんは…

ガガガビーンと、まあ、暮らしの中の災いは誰にでも降りかかる。どんまい。しゃーないわ。悲しい昨日も苦しい今日も生きて明日を迎える。それは障害があろうがなかろうが、みんな同じだと思う。

ここ数日、私は、地味な災いが頻繁に起きる。朝、腰痛で動けない時に限って、ワンコにオーレを飲まれて青ざめる(ワンコにカフェインはNG)昼、ヘルパーさんに書類訂正をお願いしたら、「私が間違えるはずがないんです」って!? いやー。若いって羨ましい。別のヘルパーさんが親切に教えてくれたのを、私は言葉を選び選び、責任者に言わずに直接伝えたのに…。
あっこれがまずかったのね。
彼女には、小さな親切は大きなお世話だったのだ。これからは、見て見ぬフリフリ。知らんふり。年寄りは若者に親切心など抱かぬがいい。はい。年寄りの心得が足りませんでした。

でもね…小さな親切大きな感謝で、動けぬ身をズリズリとさせて、生かせてもらっていると、
なんだかね。たまには、おせっかいのひとつも焼きたくなるの。
宅配やウーバーや、あらゆるサービスがあるこの令和時代、お節介という言葉自体死語化しているとは知りつつもね。

そりゃー便利なものを便利に使える人はいいですよ。でも、それが厳しい人はどんな時代も一定数出てくる。昔なら、助け合いや「ご親切」で少しはなんとかなっていたんでしょうが。
助けた人が「お互い様よ」っていうゼリフも決まっていて、私もこんな大人になりたいと思った。「社会福祉」という言葉を人より少し多くかじり昭和・平成を生き抜いた。で、時代はすっかり変わり、今はあーあーの浦島太郎状態。

「共助だけでは生きられない」と国や行政に介護の必要性を訴え、先輩障害者がひとりまた一人街に出る姿もみた。皆、ひとしく幸せを求める権利がある「人権」という感覚が根付かないままだけど、時間をかけて小さな「社会福祉」がやっと定着。人の幸福を願うという「福祉」=公なお節介に感謝したのは私だけだろうか?

その「社会福祉」もこっそりごっそり「福祉サービス」に取って代わりだした。

「あんた気づくの遅いねんって。世の中、サービスするから金をくれの時代に入っていくんや。あたいと、これからも生きるんなら、古きは良き時代なんて言ってたらあかん」ワンコの声がしたような。

はいはい。呑気な飼い主も、夕方・いつも便利な生協さんが、災いになり、少し目が覚めました。
なっなんと包装無しの生姜シロップのビンが、開いていた袋から滑り落ち、あっ!廊下にネトネトな液とガラス破片が散らばったのだ。
「自分で何とかするしかない」そんな根性だけは心身に染みついている。でも、ほうきとちり取りを持っての立位はもう無理。破片の中のずりばいも危険。
で、勇気を出して「ヘルプミー」したら、
「うちの事業所も人がいなくて急な対応は…」と曇り顔。

「滅多にないことなのに…」と、友人に告げると「あんたは相変わらず甘いなー。シロップみたいやわー。来てくれたことに感謝やろ。えっ私は…飲んでた。それに私の気持ちがいっちばん高くつくで」と笑い飛ばされた。

翌朝、定期依頼のヘルパーさんと、排水溝に集められたガラス破片を回収し、手と目で確認して再度お掃除。
生協さんにも、今後、困った事態にならないために話しました。災い転じて福ちゃんは…( ´∀` ) 口唇ヘルペスだけが元気に復活です。

 

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第6回 母と暮らせば その3(2020年11月16日
第5回 母と暮せば その2(2020年11月2日)
第4回 母と暮せば(2020年10月15日)
第3回 悲しみごとも よろこび事(2020年10月1日)
第2回 この夏は(2020年9月14日)
第1回 初めまして(2020年8月28日)

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福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

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