第45回 おひとりさま節分の巻

うちのマンション近くには2つのスーパーマーケットがある。1つはこのマンションと同時期に隣接された駅前大型商業施設。もう1つはマダム御用達の高級食材を扱うスーパー。
足元からくるスーパー特有の冷えに耐えられず、最近はどちらにも行けていない。そこでふと思い出したのは、家族が長年過ごした団地近くの小さな市場。総菜・豆腐・魚・肉・野菜・果物。50歩ほどの移動でこれだけのものが手に入る。しかもどれも新鮮かつリーズナブル。バイクや自転車に乗ってやってくる訪問者たちに買い物をお願いできるのはありがたい。でも、食欲って視覚が誘発する気がする。
見たものが食べたい。年を取ると食が細るっていうけど、それは足腰が弱り、食べ物と対面する機会が減るからだとも思います。ちなみに90歳越えの父母は割烹料理店のお弁当なんて見ると目が輝きますから。ワンコなんて四六時中ハフハフしてます。

コロナの報道回数も減り、我が家にも知人たちが、時折私とワンコの安否確認に来てくれるようにもなった。
「ちぃーちゃん・今、新大阪着いた。和菓子・洋菓子・お漬物・駅弁なんでもあるよ」と写真の付いたメールをくれる。
「あんな時だけ返信速いもんな」とお茶を入れながら笑う友人。「てへへへ。そこの財布からお金とって領収書入れといて」と弁当を頬張る。
私のお腹が落ち着いたころ合いで「節分は何かするん?」の問い。
うちは・・・ワンコと豆まきは厳しいよな。イワシの頭も然り。ならば恵方巻に食らいつく?
でも、そもそもなんで鬼のお面をかぶった人に豆投げるん?
友人と節分について調べてみた。
「鬼は外・福は内」は魔(鬼)目を縁起がいい豆で成敗し福を呼び込むということらしい。そして、鬼はイワシのにおいが苦手なんだそう。恵方巻の具は7つ。七福を巻いてかぶりつくのだそう。
「福本家では誰が鬼役だった?」
ふーん?私だったよな。「俺らは生まれた時から福本で福ちゃんやったよな。だから鬼はお母ちゃん」と夫と息子に言われ「おめえら年にいちどのうさ晴らしかよ」と思うぐらい「ぎゃはは」「うひひ」と盛り上がりよった。なによ鬼ばばあは外って!?。団地の1階はどんなに豆を投げても鳥が片付けてくれたしね。

時は残酷に過ぎ、このマンションに越してきてからはそんな時間は持てなかった。今年は家族に不評だった巻きずしでも作ってみようかと、まきすを買うところから始めた。豆とイワシは、豆腐と鰹節。
団地近くの小さな市場では、見知らぬ人になってしまったけれど、漂う空気は変わらず優しい。
お豆腐買ったら豆乳が頂けることなんてスーパーでは絶対にない。
あれから18年…中坊だった息子も33歳。鬼ばばあの角が出ることは、もうないだろう。ねっ( ´∀` )おにいちゃん。

 

第44回『年の初めに頑張ってみたこと』(2023年1月25日)
第43回『ルッキズム イズ マネー 後編』
(2023年1月1日)

2022年

第42回『ルッキズム イズ マネー (・・? 前編』
(2022年12月14日)
第41回『60歳になるとできないこと その2』
(2022年10月21日)
第40回『60歳になるとできないこと その1』
(2022年10月12日)
第39回『逃げるは、いっときの〇〇』
(2022年8月25日)
第38回『白黒のワンピース』
(2022年7月29日)
第37回『赤いワンピース』
(2022年7月7日)
第36回『続 おっちゃんのこと』
(2022年5月29日)
第35回『おっちゃんのこと』
(2022年5月4日)
第34回『風が吹けば桶屋が儲かる』
(2022年3月26日)

第33回『わがまま婆さんと意地悪おばさん 後編』
(2022年3月10日)
第32回『わがまま婆さんと意地悪おばさん 前編』
(2022年3月3日)
第31回『募金活動のなぞ その2』
(2022年2月13日)
第30回『女の子って…』
(2022年1月26日)
第29回『新年のご挨拶』
(2022年1月7日)

2021年

第28回『募金活動のなぞ その1』(2021年12月6日)
第27回『感動ポルノって? その2』
(2021年11月18日)
第26回 感動ポルノって? その1
(2021年10月29日)
第25回 働き方改革って?(2021年10月15日)
第24回 台所論争(2021年9月24日)
第23回 私、めっちゃ欲張りでして…(2021年8月27日) 
第22回 「福本さん」と呼ばれた場所(2021年8月12日)
第21回 働くご縁がございました。(2021年7月26日)
第20回 働かない人生からの…(2021年7月8日)
第19回 専業主婦というお仕事 その4 私たち、こうして育てられました
(2021年6月15日)
第18回 専業主婦というお仕事 その3 こうして母になりました
(2021年5月31日)
第17回 専業主婦というお仕事 その2 こうして福本千夏になりました
(2021年5月11日)
第16回 専業主婦というお仕事 その1 永久就職ではない
(2021年4月27日)
第15回 ロミオとジュリエット(2021年4月13日)
第14回 乙女の経験8 ○○家を継ぐ子を産んでくれさえすれば
(2021年3月28日)
第13回 乙女の経験7 そこに愛はあるんかぃ?(2021年3月11日)
第12回 乙女の経験6 福祉女子から障害女子に 変身トォーッ (@_@)
(2021年3月1日)
第11回 乙女の経験5 鏡越しのオチンチン(2021年2月13日)
第10回 乙女の経験4 社会福祉ってなんやねん(・・?
(2021年2月3日)
第9回 乙女の経験3 女らしい字とは何ぞや(・・?(2021年1月19日)
第8回 乙女の経験2 カイロと痴漢(2021年1月5日)
第7回 ファーストキスもラストキスもご用心あれ(2020年11月30日)
第6回 母と暮らせば その3(2020年11月16日
第5回 母と暮せば その2(2020年11月2日)
第4回 母と暮せば(2020年10月15日)
第3回 悲しみごとも よろこび事(2020年10月1日)
第2回 この夏は(2020年9月14日)
第1回 初めまして(2020年8月28日)

*****
福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

HOME