第64回 米騒動に踊らされて…

「ちなつさん・お米ありますか?」ヘルパーさんに珍しく聞かれ、米櫃を覗く。底をついている。「今、米どこにも売ってないですよ」と彼女は続ける。
「えーっそんなことって?」目をむく私に
「あるんです。なんならスーパーを覗いてみますか? 私、昨日、家事援助の仕事で4件スーパー梯子したけど、お米どころか米類ひとつ出会えなかった」
胸を張って言うヘルパーさんに車いすを押してもらって、スーパーに行くと、なっない。
お米コーナーの全部の棚はすっからかん。もち米や五穀米まで消えている。「ほんまやったんや」私は声をたてて笑った。
ちょこんと、残っているおにぎりを買って帰宅。ネット買いにチャレンジするも、なっない。やっと見つけてもたったかい。

一体なにが人々を米に走らせたのか?。南海トラフが来るかも?という政府が告げただけで、だとしたら、この集団心理は恐いわー。
高いお米を買うのは腹が立つが、腹が減るのも困る。人々のお困りごとに乗じて、お商売も成り立つ。でも、売るのも買うのもあまりにゲスイ値はどうかと。

コロナが出始めた頃のマスク騒動の時も、通常10円のマスクがネット価格100円で流通していた。だけど、これ、実はまだかわいいものやった。
政府なんて、「国民のために」という名目で、お口が覆えない小さな布製マスクをお高い値段で作っちゃってた。一説によると、あのアベノマスクは業者のいい値で一枚140円で、つくられていたという。一割以上が不良品なのに、管理費はばか高い代物。そりゃーそうさ。政府からの贈呈品とあらば「良いものをより安く」なんて誰が考えようものか。「悪いものをより高く」作っても責任は政府がとるわけだから。
けど、これ税金です! あの時配られたマスク、政府にいい値で買い取ってほしい。なんて言うとゲスイですか?
でも、市町村でこんなものが出回ったら、市民は提訴できるのにって思いません?

実は、米騒動・米欠品という言葉を耳にした時、私は「とうとう、どこぞの誰かが物価高を訴えるために、政府の備蓄米でも強奪したんか? ついにクーデターか(・・? なんて、少しワクっとした。
それを聞いた知人はお腹を抱えて笑ったけれど。
「で、どないしてはるの」の問いに、「ちょびっとのお米にお値段変わらずの発芽米を足した」私は正解!の顔で答えた。
「ちなつさんが一揆なんてしても、すぐにお縄ですよ。また来ます」

翌週、彼女は茶色い米櫃の真ん中に、ビニールに入れた白いお米をそっと置いてくれた。「発芽米は胃腸が丈夫な人にはいいけど、急に食べてもなかなか身にならない」「だから食欲がなかったのね。お腹は張るけれど」うなずきながら何度もお礼を言う私に「困った時はお互いさん」
彼女は…うーん。一揆よりかっちょええ!。
私はうううーん。米騒動に踊らされまいと買った発芽米、どどないしよー。
                       かっちょわるぅー。

 

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第6回 母と暮らせば その3(2020年11月16日
第5回 母と暮せば その2(2020年11月2日)
第4回 母と暮せば(2020年10月15日)
第3回 悲しみごとも よろこび事(2020年10月1日)
第2回 この夏は(2020年9月14日)
第1回 初めまして(2020年8月28日)

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福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

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