伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第144回 ヒミコいわく

古事記を入り口にザッと古代史をつっついた時期がある。
つっついただけなので知識は荒く浅く、今では大方忘れているけれども、古代史よりも古語について、よく思い出す機会がある。

読者のみなさんもご承知だろうが、古代日本列島はワ(倭)という女王国が治めていた、という。中国の古い正史『三国志』(成立時期は3世紀末頃)にそう書かれている…と学者先生がたが言っている。
その時代の、ワ国自身の記録は無い。最古の史書『日本書紀』が登場するのは、ずっと下って8世紀、奈良時代になってからだ。
それまでワ人は正史を綴れるような技術を持っていなかった。文字が無かった。先進国である中国のコトバと文字を、うんと学んで記紀をなし、漢字漢文から仮名を発明して歌集などもなし、ついにこんな雑記なんぞまで綴れるようになった。

小さな島の後進国を一度なりとも武力侵略せず、上から目線ではあっても気長に付き合ってくれた中国には、文字を使う日本人全員、感謝すべし、と私は思う。これに比べたらアメリカのおかげなんぞ、空襲原爆軍拡つきの日本株式会社だけなのだから、比べ物にならん。

それはさておき、中国が本邦をワと呼んだのは、こんな次第だったに違いない。
日本列島の原住民と初めて出会った中国人が、通訳を介して「お前らはなんだ?」 と尋ねた。原住民は答えた。「ワ? ワが誰であるかだと? ワはヤマトを治めるヒメミコなり」「ワはその家来なり」「ワは百姓なり」。よくワ、ワ、言うものどもだな、うん、彼らをワ人、ここをワ国と呼ぼう。おとなしそうだから「倭」と書こう!
先進国がそんな次第で原住民を名付ける例は近代にもあるので、そうふざけた想像ではない。

自分を指す古語は、ワから現代まで続いてワレ、果てはワタシとなる。時を経ると伸びるのはラーメンだけではないらしい。古いほどコトバは短い。相手を指すのも、古くはナ、伸びてナレ、アナタ。
また古語には自他が混同される傾向がある。自分を指すワレやオレは相手を指すようにもなり、オレは伸びてオンドレともなる。
大阪出身のイラストレーター、故・灘本唯人に教わった河内弁の啖呵に「オンドレ、ヘッサッソ!」がある。翻訳すると「おまえ、屁を吸わせるぞ」だそうな。
そして古語には男女の別がほぼ無い。それも方言に生き残っている。おばあさんが自分をオレと言う地域があるが、あれは乱暴なのではなくて、古式ゆかしいのだ。
 
ところで最近、総理大臣が防衛費の負担を「国民の責任」と演説したので悪評さくさくとなった、そこで政府は「あれは原稿の読み間違い」であって、原稿では国民ではなく「われわれ」である、と「訂正」したとか。
それで古語まで思い出したのだが……わからん。
ワレワレは代名詞だから、誰を指すかで話が変わる。
「正しくもオンドレら政府を指すのか、不埒にもワレら一般国民を指すのか、はっきりせい」とヒミコの声がする。


つっついた痕跡(2022年12月18日現在)

伊豆新聞に連載中 その694(2022年12月21日掲載)


第143回 %の魔術
第142回 情報操作とSNS
第141回 スポーツ好きのみなさんへ
第140回 「男社会」いまむかし
第139回 女ならでは
第138回 カードはお持ちで?
第137回 大病院観察記
第136回 ぼくらが子役だったとき
第135回 認定こども園??
第134回 死のライン
第133回 シェルブールの雨傘
第132回 パパ活選挙制度
第131回 久々の東京行き
第130回 利き手の考察
第129回 独裁党はデイリがお好き
第128回 深沢七郎ってひと
第127回 言論の自由社?
第126回 やたら暑い日々に
第125回 虫にも事変!
第124回 フォーク路地のコウタローさん
第123回 選挙はアブナイ
第122回 投票には行こう
第121回 老人と海
第120回 業者が作る系少女
第119回 正義があっても
第118回 草刈りをして
第117回 海苔のこと
第116回 若気の馬鹿力
第115回 子たちの集団移動
第114回 コトバの意と心
第113回 野放しの歌
第112回 あとは実行あるのみ!だが・・・
第111回 成人18歳に悩む
第110回 男のなかのオトコ

第109回 自分の場所
第108回 コロナに戦争
第107回 ソラマメの記憶
第106回 しかし3月
第105回 父、大往生す
第104回 開戦前夜のココロ
第103回 蕗味噌私流
第102回 どすこい女相撲
第101回 いらっしゃい、よく来たね
第100回 緊急速報
第99回 雪がランラン
第98回 あけまして!

〜〜〜2021年〜〜〜

第97回 これで一年しめくくり
第96回 なぜにクーポン
第95回 MRを埋め込まれる!
第94回 男はバアサン、女はジイサン
第93回 私らゴチャマゼ人
第92回 シワについて
第91回 ひさびさの死刑廃止論
第90回 ふむ、私は順調に老化している
第89回 男社会のオンナのトク
第88回 宇宙旅行について
第87回 我が投票
第86回 悲喜交交で冬に入る
第85回 ダイアナはたまた貴船菊?
第84回 転んでコケて
第83回 堤防に穴が……
第82回 うつうつ
第81回 だいじな居場所
第80回 どうしてとめられないの?
第79回 ドーデモイイ問題
第78回 入れ墨のココロ
第77回 ダイブツにゴフン???
第76回 センタクテキフウフベッセイ
第75回 虚しい「平和の祭典」
第74回 ハワイの狐トウキョウの狐
第73回 怪しい外来語
第72回 貧乏草は野生草
第71回 謙虚な話
第70回 いまごろアニメに親しんで
第69回 ぐるんぐるん
第68回 好きでもないのに
第67回 打たなくていい理由
第66回 アルゴンキン族の月
第65回 芸人の緊急事態宣言
第64回 スカート男子に幸あれ
第63回 マンボウマンボ
第62回 かたわらの話
第61回 古新聞からティッシュまで
第60回 ひとのコトバ
第59回 スイスのステキなシステム
第58回 3月8日の朝に
第57回 花と人間の不思議な関係
第56回 スモモの木の下で
第55回 10年後の余震???
第54回 男の会議から女の会議へ
第53回 コロンボがいない国
第52回 足指自由宣言
第51回 ロウバイの日々
第50回 ワルガキ
第49回 おせっかいで団結!
第48回 木星と土星が接近すると
第47回 青空に白く光る
第46回 ガスレンジ新式?!
第45回 薬局の娘が……
第44回 転々流転の姓ながら
第43回 よろしうおたのもうします
第42回 奇っ怪!アメリカ式選挙
第41回 老いてなおハツラツ?
第40回 どうしてる?労働者諸君!
第39回 ひさびさの博士
第38回 タレント事務所に電話してみた
第37回 コロナと3大統領
第36回 不安なゴマカシ日本語
第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
第32回 爺さんは婆さんだった
第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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