伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第107回 ソラマメの記憶

イモ、マメの類はどうも苦手で。
ぱさぱさもこもこ感が苦手なんですかね、食べられないわけではないけれど、小さい頃から避けている。できれば食べたくない。
ところが最近、おいしくいただくようになった。ただし、自分で育てたイモ、マメならば。
我ながらゲンキンなものだと呆れる。自分で育てた、というひと味が加わると、なんでもぐっとおいしくなる。
ただし動き回って眼があってなにか考えているような肉類については、そうは言えない。飼育も屠殺も、畑仕事の何倍も難しそうなので、挑戦する気にもならない。それでいて食べるとなると、やたらおいしくいただくのだから、これまたゲンキン勝手である。
その点、植物は、売り物にしようとさえ考えなければ、私でもできる。まず主食になりそうなのでジャガイモに挑戦した。そしてエンドウ、エダマメ、ときて、今年はソラマメに挑戦している。

いやあ、初めて見るソラマメの姿が頼もしいのには驚いた。しなやかに蔓をのばして薄い花びらの楚々たる花をポツポツつけるエンドウにくらべれば、エダマメもすごみがあったが、なんのなんのソラマメには敵わない。葉も花も束になっていて頑丈そう。これが天まで育てば「ジャックと豆の木」になりそうだ。
それよりも見るたびに『そら豆の煮えるまで』を思い出す。

幼稚園の先生と母の肝いりで、児童劇団に参加したのは小学一年生の時。東京にはすでに東劇という児童劇団があったが、大阪では我が「劇団ともだち劇場」が最初だった、と聞いている。
今にして思えば、戦前からあった、生真面目な新劇運動の一環としての児童劇団だったが、私らの母世代はそんなリクツもなにもなく、ただ我が子が標準語を操り演じる姿を見て喜ぶ、もしかしたら映画にも出るかもと想像する、そんな楽しみがあるお稽古事だったろう。近々テレビというものが盛んになって、子役もたくさん必要になる、とは想像もしていなかったろう。

参加して間もない初舞台が『そら豆の煮えるまで』だったのだ。オトナの役は劇団の先生たち、主役の少年は小学校高学年の劇団員男子、私は蝶の役だった。むろんセリフは無く、ひらひらして人間にからんでいた。
それしか覚えていない。調べてみたら元は米国の子供向け物語もしくは戯曲らしい。その翻訳を「童話劇」として他の数編と共にまとめて出版したのが、小山内薫。大正期の新劇運動の祖と聞くひとだ。
ネットでは、子どもの頃これを観た、というひとがちらほらいる。でもみんな、筋書きは覚えていない、と言っている。同じ頃、読んだお気に入りの物語なら、よく覚えているのに、と。
結局、手元の本なら好きなだけ読み返せるから、記憶に残りやすい。観劇はおおむね一度だけだから、記憶に残りにくいのだろう。
演るほうもロングランででもなければ筋書きなんか忘れてしまう。セリフがなくてつまんなかった、とおぼろな記憶が残るだけで。


初めて見たソラマメの勇姿(うちの畑で 3月2日)

伊豆新聞に連載中 その657 (2022年3月16日掲載)


第106回 しかし3月
第105回 父、大往生す
第104回 開戦前夜のココロ
第103回 蕗味噌私流
第102回 どすこい女相撲
第101回 いらっしゃい、よく来たね
第100回 緊急速報
第99回 雪がランラン
第98回 あけまして!

〜〜〜2021年〜〜〜

第97回 これで一年しめくくり
第96回 なぜにクーポン
第95回 MRを埋め込まれる!
第94回 男はバアサン、女はジイサン
第93回 私らゴチャマゼ人
第92回 シワについて
第91回 ひさびさの死刑廃止論
第90回 ふむ、私は順調に老化している
第89回 男社会のオンナのトク
第88回 宇宙旅行について
第87回 我が投票
第86回 悲喜交交で冬に入る
第85回 ダイアナはたまた貴船菊?
第84回 転んでコケて
第83回 堤防に穴が……
第82回 うつうつ
第81回 だいじな居場所
第80回 どうしてとめられないの?
第79回 ドーデモイイ問題
第78回 入れ墨のココロ
第77回 ダイブツにゴフン???
第76回 センタクテキフウフベッセイ
第75回 虚しい「平和の祭典」
第74回 ハワイの狐トウキョウの狐
第73回 怪しい外来語
第72回 貧乏草は野生草
第71回 謙虚な話
第70回 いまごろアニメに親しんで
第69回 ぐるんぐるん
第68回 好きでもないのに
第67回 打たなくていい理由
第66回 アルゴンキン族の月
第65回 芸人の緊急事態宣言
第64回 スカート男子に幸あれ
第63回 マンボウマンボ
第62回 かたわらの話
第61回 古新聞からティッシュまで
第60回 ひとのコトバ
第59回 スイスのステキなシステム
第58回 3月8日の朝に
第57回 花と人間の不思議な関係
第56回 スモモの木の下で
第55回 10年後の余震???
第54回 男の会議から女の会議へ
第53回 コロンボがいない国
第52回 足指自由宣言
第51回 ロウバイの日々
第50回 ワルガキ
第49回 おせっかいで団結!
第48回 木星と土星が接近すると
第47回 青空に白く光る
第46回 ガスレンジ新式?!
第45回 薬局の娘が……
第44回 転々流転の姓ながら
第43回 よろしうおたのもうします
第42回 奇っ怪!アメリカ式選挙
第41回 老いてなおハツラツ?
第40回 どうしてる?労働者諸君!
第39回 ひさびさの博士
第38回 タレント事務所に電話してみた
第37回 コロナと3大統領
第36回 不安なゴマカシ日本語
第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
第32回 爺さんは婆さんだった
第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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