伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第32回 爺さんは婆さんだった

あらゆるニュースのトップが「首相辞任」だった8月29日の朝、わが伊豆新聞(伊東版)のトップはこうだった。
〈雌だった!「50年目の新事実」〉〈シャボテン動物公園 死後解剖で判明〉
世界最高齢のハシビロコウ、6日に老衰死した「ビル爺さん」が実は「ビル婆さん」だったというのだ! もちろん私は、こちらのニュースのほうに、うんと惹きつけられた。安倍首相には会ったことがないけれど、ビルには何度か会っているんだもの。

ビルが相棒のシューと2羽で、この公園にやってきたのは1981年だったという。その年にシューは亡くなったそうだ。すると、昔、2羽並んでいるのを見た、という私の記憶は誤りだろう。1981年といえば私、参議院議員の1年生。母と祖母は伊東に住んでいたけれど、とてもゆっくり公園で遊ぶ余裕はなかった。
それでも初めてこの公園を訪れたのは、かなりの昔。その名も「伊豆シャボテン公園」であったころだ。噂に聞いたとおり、大きな温室に珍しいシャボテン類がそろっていた。園内にも南国の植物が茂り、主役はそれら植物なのだが、その合間に、インカの彫像のレプリカが配され、クジャクやペリカンやサルたちが放し飼い同様にして飼われていて、南国情緒を演出している。動物園とは明らかに異なるそのありようが気に入って、これまで何度も足を運んできた。
いわばお飾りの動物たちにスポットが当たり始めたのは、いつごろからだろう。公園の名にもシャボテンと並んで「動物」が付くようになった。それにつれてコチラの見方も変わる。

初めて見た時には、なあんかぼんやりしたへんなヤツ、としか思わなかった大ネズミが、園の努力で、風呂の好きな楽しいカピバラ一家になっていった。同じく初めて見た時、なんだこりゃ、灰色の棒っ杭か、ま、動かないから写真は撮りやすいわな、くらいのものだった怪鳥が、やはり園の努力で、世界最年長記録更新のハシビロコウとして広く人気を集め、その等身大の像が、伊東駅で観光客を出迎えるようにもなっていった
そのビルがメスだったとは! もっともビルという名は、オスだからとつけられたのではないようだ。嘴が幅広く大きい鳥類をシュービル(木靴)という。それをシューとビルに分けて2羽の名にした。性別には疑問もあったが、医学的な診断はビルには負担が大きい、やめておこう、ということになったという。
ビルと最後に会ったのは10年以上前だろう。近年は、夜行性ということもあって寝床から出てこなくなっていた。
「年を取るに従って男は婆さんになってくる。で、女は爺さんになってくるの」。そう言ったのは晩年の永六輔さん。なるほど、永さんはどんどん婆さんになって、付き合いやすくなっていった。私もこのごろ、爺さんめいてきた気がする。ビルも同じ気分だったのかしら?

伊豆新聞に連載中 その582 (2020年9月2日掲載)


これがビル(2009年4月10日に撮影)


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