伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第36回 不安なゴマカシ日本語

気候がへんてこなせいかしら。それとも新型ウイルスなんてものが流行って、一向におさまりそうにないせいかしら。
とにかく気分がざわざわして落ち着かない。政治にしたって、こんなに不安定な時代はここ半世紀、なかったような気がする。
もっとも私がハタチぐらいのころは、老人たちはこんなふうに言っていた。
「昔のほうがマシだったよ、悪い悪いと言われてきたけど、吉田茂のほうが今よりずっとよかった」
同じことを言いそうになる自分に呆然とする。悪い悪いと言っていたけれど、佐藤栄作のほうがマシだったよ、田中角栄ナンか上等だったよ……。

悪さの質が時代によって変わるからかしら。昔の政治の悪さは、多少とも思想的な問題だったように思う。ところが今やカネ、カネ、カネ、カネを巡る悪さが政治をおおっている。そして私は古い人間なので、思想的な悪さのほうが、カネ的な悪さよりまだマシに見えるのだ。
それで、昔の政治のほうがまだマシだった気がするのだろう。特にアベ・トランプ権力になってからは、お先真っ暗。その感じが基調にあるから、なにをやっても気が晴れない。一瞬、晴れるのは、野菜や植物や虫や気の合う友と付き合っている時だけ。

めちゃくちゃなコトバの横行も、とても気分を悪くする一因だ。いや、最近、国語審議会だかが調査したようなコトバのことじゃないのよ。コトバは時代によって変わる、変わっていい、と思っている。だから、若者が多用するヘンな文法のコトバや、ネット発の隠語めいた単語なども、使いたければ使えばいい、と思う。
日本語の将来が不安になるのは、たとえばこんなコトバを新聞の見出しに見た時だ。
〈専門人材「ジョブ型雇用」拡大〉(東京、9月28日)
なんのこっちゃ?! 読んでみたら、要は正規雇用をとりやめて、「ジョブ型雇用」でいく、というのが大企業から始まっている、そういう話だった。
これまで日本では、新卒を一様な試験で採用し、一様に正社員として扱う、それが大半だった。それを、事務は事務、販促は販促、などと、就職の時から職種とノルマと報酬を別個に決めて、職人を雇うように社員を採用する、という方法だそうだ。ジョブは仕事を意味する英語だが、ワークよりも分担された仕事や手間仕事のニュアンスが強い。
もちろん雇われる側にとっては、従来の正社員よりも、われわれ芸人に近い不安定なカタチになるはずだ。その是非は別として、私の問題はなぜ「分担型雇用」と言えばよさそうなものを、経済界はスマートでオシャレな新しいコトバを用いるのか、ということだ。
これも最近、私が気に病んでいるゴマカシ日本語のひとつに違いない。そう、ゴマカシ日本語の横行は、私達をゴマカシ社会にひっぱっていっている。

伊豆新聞に連載中 その586 (2020年9月30日掲載)


今年最後のオクラ


第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
第32
回 爺さんは婆さんだった
第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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