伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第18回 みいんなマスク

伊東駅、きれいに改装できましたね! 
この前、駅からバスに乗って城山町のホームセンターへ行ったのが、2月の初め。その時はまだ、改装工事中で、施設は何もかも仮の、でんぐり返った風景だった。
それがこの15日、約3ヶ月半ぶりで駅に行ってみたら、すっきりと仕上がっている。電車に乗るわけではないので、駅には入らなかった。だから改札からホームまでがどう変わったか、または変わらなかったかは、知らない。トイレも利用しなかったので、どうなったか、知らない。
観光案内所、というかバス待合室というか、とにかく電車やバスを待つ間、客がいる場所、それがおおいに変わった。

昔、観光案内所およびバス待合室は、やや独立してあった。それが他の施設、お土産売り場や飲食処と合体したので、広々と感じる。全面ガラス張りの明るい場所には、立派なコンセント装備のカウンターがあって、ここに座ればガラス張りの壁面を通して、駅前の風景をながめたり、パソコンを叩いたりしながら、時間を潰すことができる。
なによりよかったのは、駅舎が少しも高くならなかったことだ。全体が白く塗られた(塗り直された?)ので、なおのこと低く、羽根を広げて地に伏した白鳥のように見える。高層の駅ビルが好きなひとには不評かもしれないが、私は低く平たい駅舎が好きだ。
案内所エリアから駅構内への大きなドアには「締め切り」の張り紙があった。なぜだかわからない。同じく、フロア続きの飲食処への入り口も赤いリボンで遮断されていたが、こちらは理由がよくわかった。きれいな案内板があったからだ。
〈CLOSED 営業時間のご案内(2020年4月10日より当面の間)〉〈石舟庵 休業中〉〈とくぞう 休業中〉〈伊東市観光案内所 休業中〉。新型コロナウイルスのせい、国家的、いや世界的緊急事態のせいなのだ。

ああ、ああ、せっかく大改装が成ったというのに、今頃は笑顔の観光客でごった返したはずなのに。新しい待合室でバスを待つのは数人、彼らも、たまに窓外を通り過ぎるひとも、そして私も、みいんなマスクをしている。その上の眼はみいんな笑っていない。
バスの切符売り場には、売り手と客の間に透明の幕が下がっている。マスクの乗客5人ばかりを乗せて、マスクの運転手がアクセルを踏む。車のまばらな道路でのびのびと工事するひとたちも、マスク。ホームセンターに入って行く客たちもマスク。常よりはまばらな彼らに混じって店内をまわり、透明の幕ごしに支払いを済ませ、またマスクだらけのバスで戻った。
70余年の人生で、こんな異常な世の中を見たのは、初めてのことだ。ブランドものや手作りのマスクでシャレるひとたちが増えていると聞く。マスクでボロ儲けを当て込む通販屋も見える。人間はどんな異常にも、すぐ馴染むものらしい。

伊豆新聞に連載中 その568 (2020年5月21日掲載)


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第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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