伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第39回 ひさびさの博士

先週の月曜日、東京は渋谷へと外出した。もう、ほんとうにひさしぶり、一年ぶりくらいの外出。
雨続きだったのが、この日の朝は、すかっと晴天。特急「踊り子」の車窓から、光に満ちた風景を楽しみながらゴトゴト都会に向かって、午後には渋谷のNHKにたどり着いた。
はい、ひさびさの芸能活動。「ワンワンパッコロ!キャラともワールド」という子ども番組(BSプレミアム日曜日の朝放送)にゲスト出演。
いえ、私じゃなくて、『ひょっこりひょうたん島』の博士が、ドン・ガバチョと一緒に出る。博士と『じゃりン子チエ』のチエちゃん、この二人の声だけは、依頼されたら必ず演ることにしている。

久々のNHK、佇まいは昔のまんま。出入りするひとたちも、いかにもテレビ局に出入りするひとらしい風情で、私もこの一部だったのだな、と感慨深かった。
とはいえ、博士の声を初めて演じた時、1964年4月には、この建物「渋谷のNHK」は無かった。「田村町のNHK」と呼ばれていた、とても古いビルだった。
迎えてくれたスタッフにそう話したら「私たちはもうその局舎を知りませんから」。マスク越しにすまなさそうにそう言った。
彼女から受け取った磁気カードを使って、ガードマンも居並ぶ関所を通る。これは渋谷に移ってからのシステムだ。田村町では出入り自由。万事、いいかげんで心地よかった。お楽しみ番組なんぞは、いい加減な環境で作ったほうが、のびのびとよく出来るのではなかろうか。

ともあれ、この仕事はのびのびできた。なにしろ制作スタッフがみんな「ひょうたん島」を知らないのだ。むろんDVDは出ているが、あの時代のビデオテープは高価だったので、使い回しされてほとんど残っていない。
セリフの語尾などが「博士らしくないのだけど?」と申し出たら、「どんどん変えて演ってください、ぼくら、わかりませんから」。あはは、昔、106歳の物集高量さんが言っていたのはこれか。
「年をとるとよござんすよ。昔のことでウソ言っても平気。だあれもホントを知りませんからね」
むろんウソではなく、できる限り昔の博士の物言いを思い出して、再現した。しかし、いささか物足りなかった。セリフは全部、別どりの抜きどり。コロナ禍のおかげだ。声優を集めることなく、別々にセリフを録って、あとで繋いで会話にする。最近はデジタルなので簡単に繋げる。歌でも、1音の音程を上げたり下げたり、自由自在らしい。
でもナンカ物足りない。歌は伴奏と同録がいいし、セリフは顔見合ってしゃべるのがいいなあ。と言ってもガバチョの藤村有弘さんはもうあの世だ。没後の特番などでは、モノマネの栗田貫一さんが跡を継いで、今回も彼がガバチョ。別どりとあって、会わなかったが、その栗貫さんすら、スタッフによると「だいぶトシを取られまして」。
でしょうねえ、彼のガバチョも、もう40年だもの!

伊豆新聞に連載中 その589 (2020年10月21日掲載)


この日、車窓から


第38回 タレント事務所に電話してみた
第37回 コロナと3大統領
第36回 不安なゴマカシ日本語
第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
第32
回 爺さんは婆さんだった
第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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