伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第40回 どうしてる?労働者諸君!

時は1978年の初秋、ニューヨークの見知らぬ街に立って、途方にくれていた。ふたりの友人といっしょに。
ひとりはいっしょに旅に出たひと、もうひとりはNYに住んでもう長くなるひとだったが、彼女にもそのあたりは馴染みのない場所だった。
ちょっと遠出するために、彼女が知人から車を借りてくれた。それをうっかり違法駐車したために、たちまち警察に持っていかれてしまったのだ。
車を駐車してある場所に行って罰金を支払えばすぐ返してくれると聞いて、タクシーで出かけた。ところが私たちの車は別の場所に置かれているという。近くだが、歩いて行くのは無理な場所だった。そこでまた、タクシーを捕まえようとしたのだが。

住宅街でも繁華街でもなく、高速道路の下にあるその車道には、びゅんびゅん車が走っているのにタクシーは全く来ない。ひたすらうろたえていたら、小さなワゴン車がすっとよってきた。
話しかけてきた運転席のひとは女性。隣でうなづいているひとも同じ30代後半くらいの女性。危険はなさそうだ。それどころかとても親切なひとたちで、私たちを望みの場所まで乗せていってくれた。車には子ども用のバットやグローブが積まれていた。
降りる時、せめていくらかお礼を、と粘ったけれども、固く断られた。「いいよ、今日はレイバーデイだから、お祝いさ。ハッピーレイバーデイ!」そう言いながらニコニコ手を振ってふたりの白人女性は去っていった。
だからこの日は1978年9月の第1月曜日だったのだ。
1894年、アメリカで大きなストライキがおこり、警察と軍隊によって多くの労働者が殺された。この事態を収めるために、政府はその6日後、連邦の祝日として「労働者の日」を定める法案を成立させた。それがレイバーデイだ。
祝日は今もある。けれども、さて、「ハッピーレイバーデイ!」と祝いあっているのかどうか。

米国に限ったことではないが、このところひとびとが政府とぶつかり、殺されている。米国での主なテーマは人種差別だけれども、結局は差別による労働条件の悪化、ひいては生命の危機、つまりは労働者としての存立を阻害され、ひとびとはそのことに憤っているのだろう。大統領はそれを一顧だにせず、軍拡商売に励んでいる。
米国頼みの日本でも状況は同じ。国連の核兵器禁止条約の批准国が50に達して、1月には発効するそうだが、日本はまだ批准していない。日本こそが真っ先に唱えるべき条約なのに! 大企業は政府の援助を得て労働者を締め上げ、昔ならストライキが起きたに違いない状況のなかで、非正規はむろんのこと正規雇用の兄ちゃんたちも青くなって駆け回っている。
労働者への弾圧が、これほど進んだ世界も珍しいのではなかろうか。ニューヨークのあの親切なおばちゃんたちは、どうしているだろだろうかと気にかかる。

伊豆新聞に連載中 その590 (2020年9月21日掲載)


第39回 ひさびさの博士
第38回 タレント事務所に電話してみた
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第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
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第32
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第28回 趣味はカネ儲け?
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第26回 ツッパルことが男の……
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第22回 トランプ的思い上がり?
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第19回 ステキなステッキ
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第14回 ウイルスと風俗
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第12回 ワラビとカンゾウ
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第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
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第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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