伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第50回 ワルガキ

ヨッチンと呼ばれる子役とテレビドラマで共演していたことがある。市川好郎といって、当時の私より1学年上の中学生だった。
これがもう絵に描いたようなワルガキだった。「天才子役」の評判をほしいいままにしていた時期だったこともあって、同僚の子役にはパワハラ、それが女子ならセクハラをふるい、オトナにはしょっちゅう追いかけ回され、時にはなぐられて泣いたりしていた。
当然ながら鼻っ柱の強い少女の私には、恐ろしくも腹立たしい敵であって、本気でよく喧嘩しては、母に叱られたものだ。
今はもういない。40代半ばで病死した。それを聞いた時には淋しかった。私も年をとり、余裕を持って彼を見ることができるようになっていた。そうしてみると、彼にもカワイらしいところ、同情すべきところが見えてきたのだ。

最近、またヨッチンを思い出した。ドナルド・トランプさんを見ていて、こりゃたぶんヨッチンみたいな男だ、と思ったからだ。
ヨッチン的ワルガキ。それがとんとん拍子に出世して、アメリカ合州国のトップになった。「天才子役」どころではない、世界のナンバーワンなのだ。ヨッチン的男だったら、さぞかし限りない万能感に満たされたことだろう。
そうでなければ、人種差別や障害差別で敵をからかうこと、それを隠すどころか公衆の面前マスコミのまっただなかでやってみせることなどできるはずがない。ワルガキには、ひとの痛みに配慮するセンスが欠けている。もしくは人間関係に、個々の力関係を加味して配慮する教養に欠けている。一口に言えば傍若無人。
遠く離れた東洋の片隅にまで、そんな所業が伝わってくるのだから、近くの人たち、特に女子や権力のない男子にはさぞかし腹立たしい存在だったろう。

でもたぶん、カワイイところもきっとある。オトナの眼で見ればヨッチンにもカワイイところが見えたように。ワルガキは自分に禍がかからない場所から見れば、カワイクも楽しくもあるものだから。当人もそれをよく知っている。ヨッチンは甘え上手でもあった。
そうでなければ、いくらカネをばらまいても、取り巻きも票もついてこないだろう。カワイイところがあるし、付き合っていればそこそこトクもあるから、ワルガキは爪弾きにされないのだ。オトナにとってヨッチンはいいドラマを作るのに欠かせない子役だった。そのトクがある間は、オトナたちはヨッチンのワルサに耐えた。
しかし子役ならともかく、大統領、しかもアメリカ大統領がワルガキでは世界が困る。トランプさんはネットのSNSを駆使して、ひとを動かすのが大好きだったそうだ。いよいよ大統領の椅子が危うくなった時、彼は暗に暴動を扇動し、呼応した暴徒が議会に乱入して5人もの死者が出た。それでさすがに大手のSNSはトランプさんをネットから追い出す決断をした。こんなひとが核爆弾のスイッチを握っていたのかと思うと、あな恐ろしや。

伊豆新聞に連載中 その600 (2021年1月13日掲載)


オレが一番!の木?


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第36回 不安なゴマカシ日本語
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第22回 トランプ的思い上がり?
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第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
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第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
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