伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第89回 男社会のオンナのトク

男社会では、女は差別されてマトモに評価されないからクヤシイ。
そんな愚痴を近くにいた男相手に吐いた。すると、彼はいつになく憎々しげな表情でこんなことを言った。
「おまえな、女だから才女のなんのってもてはやされているんだぞ。男なら、おまえ程度のはごろごろいるんだ。誰も見向きもしないよ」
大きなカナヅチで殴られた気がした。二の句が継げなかった。私、22、3歳。カナヅチを振り下ろしたのは、故・青島幸男さん。当時、彼は参議院議員になって2年目くらいだったか。
青島さんのアシスタントとしてワイドショー番組の司会をし、めきめき売出し、少々気がきくので「才女」なんて呼ばれていい気になっているヒヨッコに、ふとキレた一瞬だったのだろう。

オンナを武器にシゴトしている自覚が、まるでなかった私には、闇から棒の一撃だった。でも、考えれば考えるほど、自覚なくても、この社会では、オンナが武器にもなることを、認めないわけにはいかなかった。第一、私がオンナでなかったら、それも若くてカワイイオンナノコ……だったのよ、あのころは……でなかったら、青島さんも、あんなに高級なレストランやバーに私を連れ歩きはしなかっただろう!
以後、考えれば考えるほど、いかにも私は、オンナであることでおおいにトクもしてきたのだ。私が意識するしないにかかわらず。
早い話、もしも私がオトコだったら、今や伝説の高名な男性たちと、あんなに親しく付き合うことはできなかったに違いない。それで学んだことも多くある。つまりトクしたのだ。

人間の感覚、音感や色感は、個人差がとても大きい、と知ったのもそのひとつだ。
世界的に評価された指揮者の故・岩城宏之さん(2006年、73歳で没)は、BGMのある喫茶店やレストランは極力避けていた。スピーカーから音楽が流れている街路を歩くのも苦手だった。ついリズムをカウントしてしまうのだそうだ。そして狂っていたりすると、ものすごく気色悪くなる。
指揮者の職業病だ、と諦めていたけれど、かわいそうだった。
名実ともに優れたジャズピアニストの佐藤允彦さんと10年ほど同居していたことがある(結婚していたのだ)。彼もまた、私にはなんの苦もない音、たとえばベランダに集まった鳩の鳴き声やなんかが、たいへん苦手だった。特に作曲中は、そうした音に苦しんでいた。
だから、彼らからすればひどい音楽を、私たちナミの人間は平気で聴いているのに違いない、と思う。
あ、私は、ですね、耳はナミだけれども、もしかすると演技力を感知する力は並外れているのかもしれない、と自惚れてます。
ドラマを見ていてしばしば思うのだ。よくもまあ、こんなに演技のマズイ役者が通用するものだ、しかもそれが流行っているのだから、多くの視聴者は演技音痴なのかもしれないな、と。


渋柿豊作!

伊豆新聞に連載中 その639(2021年10月27日掲載)


第88回 宇宙旅行について
第87回 我が投票
第86回 悲喜交交で冬に入る
第85回 ダイアナはたまた貴船菊?
第84回 転んでコケて
第83回 堤防に穴が……
第82回 うつうつ
第81回 だいじな居場所
第80回 どうしてとめられないの?
第79回 ドーデモイイ問題
第78回 入れ墨のココロ
第77回 ダイブツにゴフン???
第76回 センタクテキフウフベッセイ
第75回 虚しい「平和の祭典」
第74回 ハワイの狐トウキョウの狐
第73回 怪しい外来語
第72回 貧乏草は野生草
第71回 謙虚な話
第70回 いまごろアニメに親しんで
第69回 ぐるんぐるん
第68回 好きでもないのに
第67回 打たなくていい理由
第66回 アルゴンキン族の月
第65回 芸人の緊急事態宣言
第64回 スカート男子に幸あれ
第63回 マンボウマンボ
第62回 かたわらの話
第61回 古新聞からティッシュまで
第60回 ひとのコトバ
第59回 スイスのステキなシステム
第58回 3月8日の朝に
第57回 花と人間の不思議な関係
第56回 スモモの木の下で
第55回 10年後の余震???
第54回 男の会議から女の会議へ
第53回 コロンボがいない国
第52回 足指自由宣言
第51回 ロウバイの日々
第50回 ワルガキ
第49回 おせっかいで団結!
第48回 木星と土星が接近すると
第47回 青空に白く光る
第46回 ガスレンジ新式?!
第45回 薬局の娘が……
第44回 転々流転の姓ながら
第43回 よろしうおたのもうします
第42回 奇っ怪!アメリカ式選挙
第41回 老いてなおハツラツ?
第40回 どうしてる?労働者諸君!
第39回 ひさびさの博士
第38回 タレント事務所に電話してみた
第37回 コロナと3大統領
第36回 不安なゴマカシ日本語
第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
第32回 爺さんは婆さんだった
第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
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第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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