伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第19回 ステキなステッキ

地デジ開闢以来、うちはBSしか見ていない。前にも報告しましたが。
べつに不便はないが、最近、どうやらCMが地デジとはえらく違うらしい、と気がついた。地デジに比べて多い、長い、そしてえげつない。ほとんど詐欺に近いようなのが大半。ナントカ倫理規定で地デジでは許されていないようなのばかり。
特にたくさんあって不愉快なのは、老人を対象にした薬モドキと化粧品の宣伝だ。半日も見ていると、それらはこう言っているとわかる。
「ピカピカしてよく動く若者の肉体こそ正しい、シワだらけでうまく動かない老人の肉体は誤りである、よって老人は若者の肉体を保つべく努力しなければいけない」
こんなCM作るやつら、並べておいて日の丸つきの張り扇で端からパチンパチンとはたきたい。どう逆立ちしても時間は逆戻りしない、という真理から、われらの目をそらせようとするフラチモノだから。

長く生きればシワが増える、長年使った臓器はくたびれ、筋肉もくたびれ、排泄やら呼吸やら関節やらあちこちに不具合が生じる。
だから? ほっといてよ、これが人間の自然なのだから。この肉体に安住して死ぬまで楽しく生きようではないか、ご同輩!
老いたら楽しくない? 思い返してみましょうよ、いつの時代の肉体が自分にとってよかったか。私の場合、肉体が気にならなかったのは、幼児期のほんの一瞬だけ。思春期に入ると性の成熟に追いまくられて楽しいどころの騒ぎじゃなかった。みんなそうだと思うのは、若い子みんな屈託のある顔をしている。あれは人生がどうのこうのというよりは、自分の肉体を持て余しているからに違いない。
ひとが羨む女ざかりもそう楽しくはなかった。みんなが言う美形とは、どこか違っている、それが大問題だったからだ。性的魅力がなければならない、そう思い込まされていたからだ。

そんなふうに肉体と葛藤して生きてきた。そんな昔日に較べれば、ただ残りの日々を無事に過ごせるだけの体力気力があればいい、という老人期こそ、楽しく過ごすチャンスだ、と婆は思うぞよ。
とにかく老化は一生一度の経験だ。もちろん幼年期も青年期も中年期も一生一度ではある。けれど老年期には、それらには望めなかった豊富な人生経験と、長年の間に培われた洞察力が備わっている。だから楽しい。
私は最近、動作が減速している。そういえば昔見た老人たちは、みんなスローモーだった。ふむ、私は順調に老化している。よく転ぶようになったが、それも幼時のようにステンと勢い良くはいかない、ゆっくりゴロンと転ぶ。正しい老人の転び方である。心配した若い友だちが、ステキなステッキを作ってくれた。去年、嵐で折れ飛んできた桜の枝を磨いて。室内や平坦地では素手で歩くが、でこぼこ坂では愛用している。
杖のつき方を工夫する楽しみも老人期ならではだ。

伊豆新聞に連載中 その569 (2020年5月27日掲載)


第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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