伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第1回 新年につきごあいさつをば

あけました! 
めでたいみなさんには、共に迎えた新年が、またよい年でありますように! めでたくないみなさんには……ま、私の駄文でも読んで、気晴らししてくださいませ。

当方は一茶の心地なり。めでたさも中位なりおらが春。ものの本によれば、この句は一茶59歳の正月にひねったものらしい。
当時の59歳は、今の私くらいの心境だったんじゃないかしら。ただし一茶は宗教者なので、もちろん私などとは違う。句の前文にこんな意味のことを書いている。
風に飛ぶぼろ屋はぼろ屋のありのまま、大掃除もせず門松も飾らず、ありのままにして、今年も「あなた任せ」にお迎えしますよ。
このアナタは阿弥陀如来のことで、人生、阿弥陀さん任せをよしとする浄土真宗の教えを踏まえたものだそうな。私にはそんな悟りはまるでない。また一年生き延びた、これはメデタイのだろうか、はたまた? まあ、どちらとも言えないな、中位だな、大晦日といい元日といっても、同じいちにちだしぃ、みたいな心境でして。

けれどもアナタが誰かはわからないけれど、アナタ任せの心はある。りっぱな後期高齢者になってから、特に、ある。
毎年、暮から正月にかけての4、5日は、同居人(妹分)が実家に行くので、飲み食いの世話は自分でする。特におせち料理を用意しはしないけれど、カズノコと雑煮は大好きなので毎年食べる。特に雑煮は、元日は鳥出汁、2日3日は味噌出汁で、念入りに手作りする。
今年もやった。ほとほと呆れた。なんとまあ、もたつくことか! 食べるつもりだった時間を、1時間遅れて、やっとありついた。
手順がやたらに悪いのだ。ハタチ過ぎに自己特訓したので、一応、台所はできる。一時期は連日やっていた。しかし妹分と同居するようになってから、台所が遠くなった。おまけに雑煮作りは一年ぶり。手順が悪くなるのも当然か。
いやいや、そうではない、明らかに短期記憶の衰えが原因している。ちょっと別のことをしたら、今していたことを、ケロッと忘れる。アレをちょっと考えたら、コレをコロッと忘れる。かくしてウッカリの連続になる。

日頃はたいして問題ないが、料理は火加減焼き加減切り時盛り付け時など、もたもたしていたら間尺に合わない作業ばかりだ。毎日やっていればなんとかなろうが、それでも家族のぶんまで世話するとなると、大変だなあ。と、ご同輩の主婦・主夫の苦労を偲んでいたら、テレビのCMが、「そのウッカリ、笑い事ですませないでください」。すわボケの第一歩、とばかりに、脳の衰えを防ぐというサプリだかクスリだかを売りつけようとする。
はっはっは、老いるのは自然、ボケるのも自然、人間は自然の一部、なのに、自然に逆らってどうする、笑ってすませて、自分の自然を味わいながら生きるのが一番よ。と、自然任せに生きる意を固く持ち直した正月でありました。

伊豆新聞に連載中 その551(2020年1月8日掲載)


もう咲いたロウバイ!

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