第121回　老人と海

『老人と海』を読んだのは20代の末ごろ。有名な小説だったから、作者の名ヘミングウェイといっしょに題名は知っていた。
けれど、タイトルがどうにも若い私には魅力なかったので、読まずにいた。
キッカケはフォークの小室等さん。知り合って、もうかなり親しくなり、市民運動もいっしょにやり始めたころだった。待ち時間に彼が英語の本を読んでいた。へええ、勉強家だな、と興味を持って、読書の邪魔をした。
「すごい！英語の本、読んでるんだ」「うん、ちょっと勉強しなくちゃって」何読んでるの？「老人と海」へええ。面白い？「うん、とっても。前から翻訳では読んでるんだけど、すごくいいんだ」

読んでみた。もちろん翻訳を。すっごくよかった。感動のあまり、この小説からイメージした歌詞を書いた。小室さんが曲をつけて、この歌は当時やっていた運動グループの主題歌みたいになって、ずいぶん歌った。CDにもなった。

〜肌を染め上げたのは太陽と潮〜シワを刻んだのは時の満潮〜老人は戦ってきた魚たちと〜捉えねじ伏せ殺し〜そして愛していた…

この老人は独り小舟で海に乗り出し、漁をして一生を終えつつある……しっかしなあ、今、そんな漁師はいないんだろうなあ。漁業も完全に金儲けになっちゃったみたいだから。
我が静岡県の焼津漁港は、カツオの「水揚げ額」が日本一、年間400億円を超すという。その漁協職員を含む関係者が、組織的にカツオ泥棒を繰り返していた。去年2月、最初の逮捕者が出て、事件は一般に知られるようになった。
魚の重さを計る担当者が計量をごまかし、一味の加工会社に無料で冷凍カツオを納入し、見返りに小遣いを受け取る。魚に限らず、およそ企業を巡る場では、いつからかよくある話だ。しかし漁協のひとがねえ、ガックリ。

本来、肉食人間なのが、伊豆に住んでから魚をよく食べるようになった。「朝どれ」のご当地モノはお気に入り。
加えてダイビングをするようになってから、漁協も身近になった。各地の港湾には必ずのように漁協が事務所を構え、我らが悪事を働かぬよう目を光らせている。優れたプロのダイバーで漁協に就職した知人もある。
だから漁協のひとには親しみを感じる。と言ってもダイバーには一様に無愛想なので親しいひとはいない。小笠原でも伊豆でも、漁協の人間といえばヘミングウェイの老漁師そのもの。漁というバクチに魅入られた男たち。それが私のイメージだ。
漁は命がけだから、ヤクザ的な気風はむしろ自然だと思う。けれど、漁協と企業が結んでの組織的な経済犯罪に、しかも代々ウエの指示にしたがってやってきた、というのは、いかにもイメージ悪い。
もっともヤクザでも現代では企業ヤクザというのがあるそうだから、漁師も企業漁師に成り下がったのかしらね。

うちの庭から。今日は風波。

伊豆新聞に連載中　その671　（2022年6月29日掲載）

第120回　業者が作る系少女
第119回　正義があっても
第118回　草刈りをして
第117回　海苔のこと
第116回　若気の馬鹿力
第115回　子たちの集団移動
第114回　コトバの意と心
第113回　野放しの歌
第112回　あとは実行あるのみ！だが・・・
第111回　成人18歳に悩む
第110回　男のなかのオトコ
第109回　自分の場所
第108回　コロナに戦争
第107回　ソラマメの記憶
第106回　しかし3月
第105回　父、大往生す
第104回　開戦前夜のココロ
第103回　蕗味噌私流
第102回　どすこい女相撲
第101回　いらっしゃい、よく来たね
第100回　緊急速報
第99回　雪がランラン
第98回　あけまして！

〜〜〜2021年〜〜〜

第97回　これで一年しめくくり
第96回　なぜにクーポン
第95回　MRを埋め込まれる！
第94回　男はバアサン、女はジイサン
第93回　私らゴチャマゼ人
第92回　シワについて
第91回　ひさびさの死刑廃止論
第90回　ふむ、私は順調に老化している
第89回　男社会のオンナのトク
第88回　宇宙旅行について
第87回　我が投票
第86回　悲喜交交で冬に入る
第85回　ダイアナはたまた貴船菊？
第84回　転んでコケて
第83回　堤防に穴が……
第82回　うつうつ
第81回　だいじな居場所
第80回　どうしてとめられないの？
第79回　ドーデモイイ問題
第78回　入れ墨のココロ
第77回　ダイブツにゴフン？？？
第76回　センタクテキフウフベッセイ
第75回　虚しい「平和の祭典」
第74回　ハワイの狐トウキョウの狐
第73回　怪しい外来語
第72回　貧乏草は野生草
第71回　謙虚な話
第70回　いまごろアニメに親しんで
第69回　ぐるんぐるん
第68回　好きでもないのに
第67回　打たなくていい理由
第66回　アルゴンキン族の月
第65回　芸人の緊急事態宣言
第64回　スカート男子に幸あれ
第63回　マンボウマンボ
第62回　かたわらの話
第61回　古新聞からティッシュまで
第60回　ひとのコトバ
第59回　スイスのステキなシステム
第58回　3月8日の朝に
第57回　花と人間の不思議な関係
第56回　スモモの木の下で
第55回　10年後の余震？？？
第54回　男の会議から女の会議へ
第53回　コロンボがいない国
第52回　足指自由宣言
第51回　ロウバイの日々
第50回　ワルガキ
第49回　おせっかいで団結！
第48回　木星と土星が接近すると
第47回　青空に白く光る
第46回　ガスレンジ新式？！
第45回　薬局の娘が……
第44回　転々流転の姓ながら
第43回　よろしうおたのもうします
第42回　奇っ怪！アメリカ式選挙
第41回　老いてなおハツラツ？！
第40回　どうしてる？労働者諸君！
第39回　ひさびさの博士
第38回　タレント事務所に電話してみた
第37回　コロナと３大統領
第36回　不安なゴマカシ日本語
第35回　このごろの自殺
第34回　元子役の意見
第33回　今こそラジオ体操！
第32回　爺さんは婆さんだった
第31回　LGBTQ＋！
第30回　学歴詐称
第29回　嬉し恐ろし初体験
第28回　趣味はカネ儲け？
第27回　『雨』を歌えば
第26回　ツッパルことが男の……
第25回　連日の雨に
第24回　ひしひしと不確実性の時代
第23回　野球オンチなので
第22回　トランプ的思い上がり？
第21回　ウグイスはなんと鳴く？
第20回　昔「広告屋」今アドマン
第19回　ステキなステッキ
第18回　みいんなマスク
第17回　ただいま！雑記復活！
第16回　みなさんご無事で！！！
第15回　DT方式？！
第14回　ウイルスと風俗
第13回　私の問題・社会の問題
第12回　ワラビとカンゾウ
第11回　ウイルスまくひとカネまくひと
第10回　新型コロナウイルスお目見え！
第9回　新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回　カードの脅迫
第7回　「仮釈放」の友
第6回　子抱き地蔵
第5回　マスクが消えた？！
第4回　確率論的津波評価、なぜ？
第3回　「次世代」なるもの
第2回　道玄坂の日の丸　
第1回　新年につきごあいさつをば

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