伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第16回 みなさんご無事で!!!

わ〜い、エビネランが咲いた!
伊東に越してきて、庭の山際にこの野生ランを見つけた時には母祖母ともども大興奮した。都会ではまず図鑑でしか出会えない植物だもの。
若緑のプリーツスカートみたいな葉の間から、茶がかった茎をすっと伸ばして、いくつもの花を鈴なりにつける。大きく色とりどりの園芸種とは違って、はるかに小さく色も地味な白色系だけれど、その花々の形はまぎれもなくラン。コチョウランやシンビジュームの姉妹だとひと目でわかる。
それから毎春、多い時には10株ほどもが顔を出す。うふふ、また来たよ、と言いながら。
それが、ここ何年か見なかった。母が亡くなってからだと思う、庭をしげしげ見ることも、手入れすることもなくなって、エビネのあたりは草茫々カヤ茫々笹茫々になっていた。エビネは消えた、と思っていた。
それが去年、思い立って山際まで草を刈った。そうしたら今春、出てきたのだ、元の場所に。うふふ、また来たよ、と。7株は数えた。草茫々の年月、その陰で密かに咲いていたのだろうか。それとも地中でじっと待っていたのだろうか、再起の時を。

どちらにせよ身につまされる話だ。ニュースはもちろんのこと、この雑記の話題も、3月4日の559回以来、新型コロナウイルスを離れられずにいる。
もうフタ月半余り、私はじっと地中に、いや自宅周辺にこもっている。東京はもちろん、伊東の町にも降りていない。もともと出不精なので別段それに不満はない。時に顔を合わせてお喋りするのは、家人のほかは我が自治会地内のご近所さん何人かだけ。外からの来訪者は郵便屋さんや宅配屋さんだけ。これまた、意外に思われるかもしれないが、もともと人付き合いが苦手なので、不満ではない。
子孫が無い、介護すべき身内も無い、正規も派遣もバイトもそもそも給金が無い、年金も貯金も無に等しい、おかげで緊急事態宣言にともなうてんやわんやも味わわずにすんでいる。それでも、私たちは来年の春には花開くことができるかしら、という不安がざわざわ身に迫ってくる。きっと、フクシマ原発難民のひとびとは、こんな気分を抱いてきたのだろう。そして第二次世界大戦の時代のひとたちも。この気分は、政府はまったく頼りにならない、と確認した者の気分に違いない。

ところで、伊豆新聞も緊急事態宣言を受けて〈20日から特別紙面に切り替え〉たそうだ。伊東市民新聞として創刊したのが1948年。奇しくも私と同じ年。やはり生涯まれなパンデミックを浴びているのだ。で、このコラムは来週から2回休載、その次の週からはまだ決まっていない、と編集部。もしかすると、これが最後に? せめてきちんと最終回を書きたいけれど、さてどうなるものやら。
いずれにせよ親愛なる読者諸姉諸兄、いのちとたましいを何よりお大事に。ともに再起の春を迎えられますように!

伊豆新聞に連載中 その566 (2020年4月22日掲載)


ふふふ             きたよ   


第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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