伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第34回 元子役の意見

子役は若年労働者です、体験的にも実態的にも。
オトナの職場にいろいろあるように、子役も属する環境によって経験はいろいろ。昔は大きく分けて3種類の環境があった。

@舞台およびその楽屋、A映画およびその撮影所、B移動劇団。

子役大センパイの水の江瀧子さんは13歳で松竹少女歌劇団に入ったので@。我が母と同年で一世を風靡したデコちゃんこと高峰秀子さんは松竹蒲田撮影所に所属して少女時代を過ごしたのでA。Bでオトナになってからよく知られたのは、私よりふたつ下の梅沢富美男さん。「梅沢劇団」の子役から、今はその3代目座長だ。

テレビは芸能人にとって、職場と言えるような一定した労働時間や環境が定まらないので、今は置いておく。あ? 売れっ子TVタレントがしばしばクスリや非行で話題になるのは、労働環境がひどく不安定なせいではなかろうか?
一定の職場、撮影所や劇団に腰を据えていないタレントは、派遣労働者と同じだ。所属するプロダクションや劇団が派遣会社。テレビ局は派遣先。会社とテレビ局との関係によって、労働条件は良くも悪くもなる。たいていは悪くなる。

いや脱線脱線。

私は@でした。東宝株式会社の演劇部に10歳から18、9歳まで所属していて、有楽町の芸術座が基本の職場、次いでその向かいの東宝劇場、時に名古屋の名鉄ホールなどに出張していた。東宝を離れてからは自家営業。
子役という若年労働者の問題は、なんといっても同年代の同僚が極端に少ないこと。わずかにあったそうした仲間は、だからとても懐かしい。長じた姿をTVで見ると、あ、ナニナニちゃんだ、と思わず声が出て、その元気な姿が嬉しい。
小学生のころ共演した日吉としやすクン、土田早苗ちゃん、中学生のころの岡本信人くん、そして同じ楽屋で一月過ごし、18歳の悩みや楽しみを分け合った島かおりちゃん、前田美波里ちゃん。
まだ幼い時は、競争心や嫉妬心もむき出しでいろいろな事件もあったけれど、時がたつと、同じ職場で数少ない若年労働者として交わしあった共感だけが残っている。

ところで私は、芸能をやりたい、という子やその保護者に相談されたら、どうぞおやりなさい、と答えるだろう。いや、相談されたことは無いが。でも子役としてTVや舞台に出たい、と言われたら、ちょっと待て、と言うだろう。
第一にその希望は、当人自身のものではなく、周囲のオトナに影響されてのものに違いない、そう確信するからだ。そして子役は若年労働だからだ。今、戦地や貧困地域での若年労働が問題になっているけれど、子役もまたまぎれない若年労働なので、同じ問題をはらんでいる。たまに一部を照らすスポットライトのために、問題は闇に沈んでいるだけだ。
それを見るのは、オトナの役目ではないか? 機嫌よくCMタレントを務める子どもを見ながら、元子役はそんなことを考えるのでした。

伊豆新聞に連載中 その584 (2020年9月16日掲載)


年端もゆかぬヤモリさん


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第32
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第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
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第26回 ツッパルことが男の……
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第24回 ひしひしと不確実性の時代
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第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
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第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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