伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第119回 正義があっても

今、アメリカ合州国では「銃規制」を求める運動が再燃しているそうだ。
しょっちゅう類似の事件が起きるかの国では、大手の銃器会社の経営者が国会議員にいるという政治状況もあって、このところ運動は下火になっていたらしい。
それが最近、事件が相次ぎ、特に5月24日、テキサス州の小学校で起きた事件がひとびとを大きく揺さぶった。死者数21人。1991年からの米国連邦当局の統計では、史上7番目の数だったけれど、そのうち19人が7歳から10歳の小学生たちだった。
犯人は18歳。まさにかの地では18歳から銃の購入所持を許される。彼が乱射した銃は、正式な手続きを経て、合法的に入手したものだった……。
と聞いてもさほど震撼しないのは、決して私が薄情なばかりではないと思う。おそらく、それこそ「合法的」に所持された銃器類によって、子どもを含む死者がぞろぞろ出ているウクライナ情勢が同じニュースにあるからだろう。

こういう話になると、いつも思い出す有名な警句がある。「ひとり殺せば殺人者、百万殺せば英雄で、全部殺せば神様だ。殺した数が殺人を神聖化するのだ」。
元は英国の牧師の言葉だそうだが、私はチャップリン作の映画『殺人狂時代』のセリフで知った。よく知られているように、すぐれたコメディアンである彼は、すぐれた社会批評家でもあり、作品でたびたび社会批判をした。これはその代表作。
私にこのテの問題をつきつけたのは、「70年代学生運動」だった。当時からさほど深く考えるタチではなく、政治にはごくウトかったから、敏感に考えの焦点を合わせていたわけではない。それでも、悪人や戦争屋ではない、マジメに世のため人のためを考えている同世代の若者たちが、正義を訴えるのに暴力を使い、果ては仲間殺しや、「悪い国」の人々を無差別に殺す兵になったりし、対して警察権力や正規軍という正義の化身が彼らを追い詰め断罪する、そんな風景に無関心ではいられなかった。

正義があれば殺人はイイコトになるのだろうか?
反射的に出てくる答は「イイわきゃないよ」。どんな命であれ命は神秘そのものだ。ヒトごときが左右していいものではない。そして正義は立ち位置によって悪にもなる魔物だ。世間が悪と断じる乱射事件の犯人にも彼なりの正義があるに違いない。正義こそは暴力の動機であるに違いない。
しかし、では、わけもなく弾圧され殺される人々はどうなる? 勝ち組の政府や民族、DVの親や夫に苦しめられて逃げることもできないひとたちは、ただ殺されるしかないのだろうか? 
明確な答えは出なかったが、とりあえず決めた。私は正義があっても殺さない、正義の殺しにも手は貸さない、と。
ところで、いまだにどこでも暴力は多く男が振るう。しかし平等な社会参加が完全に実現すれば、女も、近年のドラマの女刑事のように暴力をふるうのかしら? げげ、他人事ではないな。


ドクダミいきいき

伊豆新聞に連載中 その669(2022年6月15日掲載)


第118回 草刈りをして
第117回 海苔のこと
第116回 若気の馬鹿力
第115回 子たちの集団移動
第114回 コトバの意と心
第113回 野放しの歌
第112回 あとは実行あるのみ!だが・・・
第111回 成人18歳に悩む
第110回 男のなかのオトコ

第109回 自分の場所
第108回 コロナに戦争
第107回 ソラマメの記憶
第106回 しかし3月
第105回 父、大往生す
第104回 開戦前夜のココロ
第103回 蕗味噌私流
第102回 どすこい女相撲
第101回 いらっしゃい、よく来たね
第100回 緊急速報
第99回 雪がランラン
第98回 あけまして!

〜〜〜2021年〜〜〜

第97回 これで一年しめくくり
第96回 なぜにクーポン
第95回 MRを埋め込まれる!
第94回 男はバアサン、女はジイサン
第93回 私らゴチャマゼ人
第92回 シワについて
第91回 ひさびさの死刑廃止論
第90回 ふむ、私は順調に老化している
第89回 男社会のオンナのトク
第88回 宇宙旅行について
第87回 我が投票
第86回 悲喜交交で冬に入る
第85回 ダイアナはたまた貴船菊?
第84回 転んでコケて
第83回 堤防に穴が……
第82回 うつうつ
第81回 だいじな居場所
第80回 どうしてとめられないの?
第79回 ドーデモイイ問題
第78回 入れ墨のココロ
第77回 ダイブツにゴフン???
第76回 センタクテキフウフベッセイ
第75回 虚しい「平和の祭典」
第74回 ハワイの狐トウキョウの狐
第73回 怪しい外来語
第72回 貧乏草は野生草
第71回 謙虚な話
第70回 いまごろアニメに親しんで
第69回 ぐるんぐるん
第68回 好きでもないのに
第67回 打たなくていい理由
第66回 アルゴンキン族の月
第65回 芸人の緊急事態宣言
第64回 スカート男子に幸あれ
第63回 マンボウマンボ
第62回 かたわらの話
第61回 古新聞からティッシュまで
第60回 ひとのコトバ
第59回 スイスのステキなシステム
第58回 3月8日の朝に
第57回 花と人間の不思議な関係
第56回 スモモの木の下で
第55回 10年後の余震???
第54回 男の会議から女の会議へ
第53回 コロンボがいない国
第52回 足指自由宣言
第51回 ロウバイの日々
第50回 ワルガキ
第49回 おせっかいで団結!
第48回 木星と土星が接近すると
第47回 青空に白く光る
第46回 ガスレンジ新式?!
第45回 薬局の娘が……
第44回 転々流転の姓ながら
第43回 よろしうおたのもうします
第42回 奇っ怪!アメリカ式選挙
第41回 老いてなおハツラツ?
第40回 どうしてる?労働者諸君!
第39回 ひさびさの博士
第38回 タレント事務所に電話してみた
第37回 コロナと3大統領
第36回 不安なゴマカシ日本語
第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
第32回 爺さんは婆さんだった
第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

HOME