第41回 60歳になるとできないこと その2
物価高騰に伴い、ようやく自分だけのひとり口の養い方を考え始めた。安いからといって使わないものは買うのは節約ではなく無駄遣い。それよりも食品ロスに気をつけることが大事。
調味料も一番小さいものを選び、買い置きもしない。作り置きもやめた。一週間後、冷蔵庫を開ければ何がどこにあるか一目瞭然になった。部屋同様、冷蔵庫も必要最低限のものを定位置に置く。汚しては片づける繰り返しではなく、汚さないダ。
「これをキープ」と2週間後。ワンコのご飯とおやつが占める冷蔵庫になったところで。「腹減ったーおかんなんかない?」と息子登場。
「うわっうち、いつから?えっなんで何もないん。まさか、おかん犬のえさ食うてるんちゃうやろな」と空の冷蔵庫に慌てふためく姿は小学生みたいだ。あははは。
「1キロ3800円のワンコフードなんて贅沢すぎて私は口にしてないわ。いつ帰ってくるかわからんあんたのことを考えなくなっただけ」
「けど、さすがにこれはまずいって」まあね。天変地異にコロナ。状況によっちゃヘルパーさんにも来ていただけず、ワンコと何日か家に閉じこもらなきゃいけなくなるものね。
「おかん、腰痛いんか?で、買い物に行けてないんか?」まあね、1週間にメールしたんだけど。「まあね、まあねってさっきから」と声を少しイラつかせる。「まずは、こいつを外の風に当てとくか」足元に絡みつくワンコを抱き上げる。10分後、息を切らせて戻り「はい、次おかん」とあっという間に車いすごと拉致られる。
車の中でスマホを奪われ、ウーバーイーツされる。スーパーでは炭酸飲料やカップラーメンやレンチンご飯を直進のみの車いす操作で籠ひと盛。もう止めてくれぃ。ふとももに置かれた荷物が重い( ゚Д゚)
ピザを食らい、嵐のように去っていったカツアゲ小僧が残したものは(・・??
「ありがとう」と長―いレシート。冷蔵庫にはレンチンしたささみ。ははははー。
「あとはそいつに頼め」だと。久しぶりの蒸し鶏に食らいつくこのワンコ。首に風呂敷を巻いて買い物に行けるタイプではない。
数日後「あたい留守番してるからさー。また、ささみ買ってきてよ。お・か・ん」冷蔵庫の前でじーっと見つめるインドア派ワンコに背を押され、ヘルパーさんと買い物に出る。
うちでは比較的若手だけど、お付き合いは一番長いヘルパーさんと、すっかり膨らんでしまったエコバッグと帰宅。
彼女は、夫の葬儀の日から、遠くから見守るような視線を送り続けくれている。つかず離れずの関係が16年続いているのは、彼女のプロ意識と忍耐力、そして運命?あははは。
野菜ジュースやバナナ・焼き芋、野菜や豆腐などを手際よく冷蔵庫に入れていく。いつもは「2つだけ」と店に入る前に誓うパン5つは冷凍する。
「冷蔵庫が潤うと、なんだかほっとしますよね。非常時にも安心ですし」
「ワンコフードさえ確保しとけば、私はなんとかしのげる。あいつがたまに帰ってくると非常時になり、私の財布に風が吹く」
「でも、嬉しそうな顔ですよ」微笑むヘルパー
傍らで「ささみは?焼き芋は?」
硬直気味の足にワンコがわっしょいわっしょいする。
「あんたも兄ちゃん(息子)に似てきて…」と目を細める。
60歳になってもできないこと。
息子に甘い!ゆえの節約だ。ワンコには厳しくするはずが…あーあー。私ちっとも育ってないやん。