第27回 感動ポルノって? その2

乾く( ゚Д゚) とにかく乾く。目が、口が、手足がパリッパリになる。足膝をなめるわんこに「大丈夫。ご心配なく」と視線を合わせる。が、かゆい。いかにしても痒い。コロナくんもおとなしい様子なので、今年は「秋の病院巡り」だ。
眼科でドライアイの目薬を、内科で漢方薬を、皮膚科で保湿クリームを処方される。
3科とも「乾燥による…」との診断。冬の入り口は空気が乾くことなんて、若い頃には気にも留めなかった。中高年の部類に入っても、なんとかしのいできた。が、還暦前にして老いるというのは枯れることなんだと痛感。
まあね、生きてりゃ変化するは、人も含めた「なまもの」の定めです。

だがしかし、人前に出るお仕事のかたは、年を重ねても潤ってはります。サイボーグ的な美しさを保っている方、あるいは、内面からの美しさがオーラ化したお方。みなさん日々、努力されていらっしゃるんでしょう。「その所作や姿は一日にして成らず」です。

ゆめ風基金(被災障害者を支援するNPO)で勤めていた頃、チャリティーコンサートやイベントで芸能人さんと出会う機会が年に数度あった。
どのかたも老化ではなく、すてきに変化していらっしゃる。YouTube世代ではない私は、テレビのブラウン管から抜け出した一芸を持つ方々を目の前に興奮。「サイン」や「握手」を求めたいところなんだけど、感謝の思いを述べたら即退散! おしごとおしごと。

でも、ある日、ゆめ風基金の呼びかけ人代表をしていただいている小室等さまのコンサート後の楽屋で。
小室さんの娘さん・こむろゆい様(シンガーソングライター)が感極まっておられた。
「お前が泣いてどうするんや。お客さんに感動していただくのが僕らの勤めや。ゆい」と等様。「うっうん」とあげたお顔がなんとも素敵で、「一緒に泣いてくれてありがとうございます。素敵な時間でした」とこの日だけ、柔らかな手に触れちゃいました。

この頃、私は「千夏ちゃんが行く」が出版され、夫喪失症候群からの一歩を踏み出したところ。「小室さん、私も泣き虫です」と告げると「わかります。本も読んだのでよーく。だけど、ちなっちゃんは強い泣き虫でしょ」と微笑まれた。

歌うことで書くことで演じることで、自分の明日をつかむ。そんな方々から楽屋でかけられた言葉が、あの頃の私の支えだったのだ。今も!

また、映画監督のたまごだった友人はこう言った。「僕は世に出るものは、なんでも凄いって思ってます。そこは、障害あるなし関係ないって。他人の評価は他人のもの。千夏さんは書きたいから書くでいいんです」

ふむふむ。感動ポルノの是非は問わなくてもいいということかー。
24時間テレビの2時間ドラマも、障害者は感動させる道具じゃないと訴える番組も好きな私は、このとき妙にほっとした。

結局、わたしゃミーハーなだけか?!(´∀`*)

強い泣き虫であることも、た し か。でも、ドライアイにつき、涙もかれっかれなのよね。

 



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第6回 母と暮らせば その3(2020年11月16日
第5回 母と暮せば その2(2020年11月2日)
第4回 母と暮せば(2020年10月15日)
第3回 悲しみごとも よろこび事(2020年10月1日)
第2回 この夏は(2020年9月14日)
第1回 初めまして(2020年8月28日)

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福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

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