心なごみませ  第47回

「みんな一生懸命に生きている」

山元加津子(在日石川人)

 先月、運動会がありました。一番でも二番でも、三番でも、懸命に走っている子供たちや、「頑張るから応援してよ」「がんばったよ」と声をかけてくれる子供たちを見ていて、うれしい気持ちでいっぱいになりました。私、みんなみんな大好きです。
 いつの頃からでしょう。たとえば、何かに怒って、ものをあちこちなげている子供さんといても、ついつらくて嘘をついてしまった子供さんを見ても、それから、わあわあ泣いている子供さんを見ても、口の周りも手も、いつもどろんこの子供さんといても、すぐに好きと思って、いとおしく思えるようになったのはいつの頃からでしょうか。
 もしかしたら、生きるっていうことは、年齢に関係なく、やっぱり大変なことで、みんな自分というものを背負って一生懸命に生きているんだなあと思うようになったころからでしょうか? 自分自身もいろんなことが思い通りにいかずに、そして誰もがそうなんだと思うようになったころからでしょうか?
 みんなが乗っているバスを見送ったときに、卒業生のひろくんが、声をかけてくれました。「今日、休みだったから」 「お誕生日が近いでしょう?  だから、プレゼントを持ってきたよ」
 私のお誕生日はまだまだ先なのです。「でも、僕のお休みとお誕生日は重ならないから」と。 つつみの中はお菓子でした。受け取ってもいいのでしょうか? 大切なひろくんが働いて手にしたお金です。
「もらってもいいのかな」というと、ちょっと不安そうな顔をしてうつむきました。「だいじょうぶやし、俺はちゃんと貯金してるし、ずっとずっとあげようと決めていたし」
「ありがとう」と 言うと、ひろくんは、「俺もっともっとお金持ちになったら、世界一周でも連れて行ってやるわ」なんて言ってくれるのです。 ほんとうになんてなんていとおしいのでしょう。
 ひろくんはお父さんやお母さんにも必ずお祝いをしているのだと教えてくれました。 ひろくんもまた、一生懸命、一生懸命自分の人生を生きているのですね。