心なごみませ  第27回

「ゆうすけくんの笑顔のために」

山元加津子(在日石川人)

 ゆうすけくんが今日も元気に学校にきてくれました。彼の笑顔は天下一品です。彼が笑うとみんなもうれしくてたまらくなるし、頑張っているそばにいると、とても元気が出てきます。
 けれど、ゆうすけくんが学校へ通うのは簡単というわけではありませんでした。というのも、ゆうすけくんはお日様の光をあびることができないのです。もし紫外線を浴びてしまうと、ひどい火傷を負ってしまい、命にかかわることにもなりかねないのです。それで、教室には窓に紫外線カットフイルムとカーテンの用意がされました。
 ところで、たとえば、車椅子の生徒さんのために自動ドアがついたり、ゆうすけくんひとりのために、高いフイルムを貼るのは特別扱いなんじゃないかなんて思うかたがあるかもしれません。でも私は違うと言いたいのです。人間は誰だってみんな特別に大事なんじゃないかなと思うのです。だからみんな特別扱いされてもいいのじゃないかと思ったのです。
 私の今の考え、どんなふうにお話すればいいのかしら。
 あのね、車椅子の人は《特別》に車椅子を使って町で買物をしていて、車椅子が必要でない人も車椅子を使ってもいいのだけど道に段があると大変と思う人は、《特別》に車椅子を使わないで、歩いていると考えることはできないでしょうか。
 それから、たとえば教科書。人間ってみんないろいろだから、いろいろな教科書が特別に選べるとうれしいなと思います。弱視の人は大きいのを、それから手がうまく使いづらい人は、ざらざらしているほうがめくりやすいとか、分厚くしたほうがいいとか、それから、弱視じゃない人で、私も大きいのがいいと思ったら、そうしたらいいけれど、大きくて、机からはみでるし、重いのは嫌と思う人は《特別》に小さいのにしたらいい。そしたら、誰もが《特別扱い》だなあと思うんです。そんな考えはまとはずれでしょうか?でも子供たちはみんないろいろだけど、同じように、たくさんの友達の中で、笑顔で学校生活を送りたいと願っていると思うのです。 今ゆうすけくんは発表会の劇「勧進帳」の練習をとてもはりきってしています。紫外線カットフイルムとカーテンがあるからこそ、あんなに素敵な笑顔の彼と私たちは一緒にいられるのです。
もっともっと誰もが特別扱いされて、同じように街の中で楽しくすごせるようになるとうれしいです。