心なごみませ  第21回

「自動車学校」

山元加津子(在日石川人)

 学校の卒業生が、車の免許をとったよ、今度のせてあげるからねと電話をくれました。車いすが簡単に乗せられて、それから操作も全部手でできて、すごく快適な車も買う予定だそうです。今はいろいろな車の会社から、車いすを使っておられる方が乗り降りしやすかったり、運転しやすい車がたくさん出ているのだそうでうれしいことですね。
 私、昔自分が免許をいただいたときのことを思いだしました。
 自動車学校・・とってもとっても大変でした。私が大変というより周りの方が大変だったかもしれない・・でも毎日やっぱりあんまり受からないから悲しくて、行きたくないなあと泣いていた思いでがあります。
 建物にぶつけて、建物を壊したり・・エス字とかゼットの形になっていたり、車庫入れの練習をするときに立っている三角の印もいくつもなぎ倒して壊したり・・もうだんだん壊したり、変なことしてしまったりで有名になってしまって、車に乗ると教官の先生に「ああ、きみがあの子」なんて言われてしまうくらいでした。
 勘違いもいっぱいしました。教官さんが「離して離して・・」っておっしゃるのです。何を?って思ったけど聞けなくて、初めはそっとアクセルから足を離して、それでも「離せ」っておっしゃるから、今度はブレーキから足を離して・・それでもだめだからもう離すところはここしかないと思って、ハンドルから手をぱっと離したら「ばかやろう・・。左の並木塀から車を離せって言ったんだ」とすごく叱られました。なんとか試験まで来たときに、急に雨が降り出して、ワイパーの動かし方なんて知らないって思い出して、どうぞ雨が強くなりませんようにって思っていたのに、どんどん降り出して、とうとう「ワイパー」って怒られて、どのスイッチかな・・これかな?って動かしたら、ライトがぱっとついて、違ったと思って、今度は何か押したら、シューって水が窓に出て、結局「ワイパーの場所を知らない」ということで落ちてしまったのです。いつも見て下さってる教官さんが「きみはいいこなんだけど、でも車はあんまりのらないほうがいいなぁ」なんて、私があんまりシュンとしているので、何かなぐさめなくちゃいけないと思って下さって、それでもいいところが見つからなかったのか「いい子」なんだけどなんてなぐさめてくださったのでした。
 それでついに卒業のとき「あんまりおいておくと、どんどん学校がこわれていくし、たまったもんじゃないから、はやく出ていってもらわないとね」とか「この学校卒業って言わないでね」とか冗談だかそうじゃないかわからない言葉をいただいて卒業をしました。大学の先生も私が路上に出ている時間は「危険だから、外は歩かないこと」なんて黒板に書いてて、「またぁ」とおかしかったです。
 でも今は車大好き。でもやっぱりバックは苦手なので、できるだけバックはしないようにそれから細い道も入らないようにしています。でもまっすぐな道は得意です。(これ、得意って言っていいのかな?)