心なごみませ  第19回

「あるということ」

山元加津子(在日石川人)

   

 その日、大ちゃんと私は「ある」ということについてずいぶん話をしました。
「ある」ということがどういうことかについて始まったのは星のことを話していたときからでした。

   
星の光が 見える
星と 僕は 知らないもの同志やけど
僕の心を 動かす力を 持ってるんやな

 星はそこでひとり光っています。地球に住んでる人間の誰とも関わりなしにそこに光っています。私たちもお星さまとぜんぜん関係なしに、それぞれが生きているけれど、大ちゃんはお星さまを見て、心が動いたのが不思議と言いました。ああ、本当だ、お星様は何万光年もの遠くにいるのに、私たちはお星さまにお願いをしたり、元気をもらったり、勇気をもらったり・・・お星さまはなんとたくさんの気持ちを私たちにおこしてくれているのでしょうか。

 大ちゃんはそれから「ある」ということについて考えたのだと思います。

     
葉っぱだって 石ころだって 
そこにあるだけで
心を動かす力がある
それが“ある”ということなんかな

 お星さまだけじゃなくて、大ちゃんは葉っぱだって、石ころだって、それからきっと風だって、光だって、なんだって心を動かす力があると驚いています。みんな自分に関係なく生きているみたいなのに、みんな大ちゃんの心を動かす力があると大ちゃんはびっくりしたみたいです。そして、急に気がついたように言いました。「それが“ある”ということなんかな」

 それから大ちゃんは人についても考えました。 

   
僕だってそこに“ある”
“ある”ものはみんな大切なんや

 私だって“ある”なのですね。みんなみんな“ある”なんだ、“ある”ってことは大切だっていう証拠なんだ、そしてみんなみんな“ある”だからとっても大切って思ったら、私、うれしくてうれしくてしかたがないです。

 大ちゃんが昔作った詩です。

僕が生まれたのには理由がある
生まれるってことにはみんな理由があるんや

僕は僕やから
大切にできる
僕は僕やから
がんばれる
僕は僕やから
好きになれる  

   
 自然だって、人間だって、みんなひとりひとり勝手にいきているようなのに、みんな関わりあっていて、どれもが大切ってわかったら、私も自分のことを大切にしたいなあと思いました。自分は自分でいいんだ、自分だからこそ大切なんだってまた考えられてうれしいです。