チャランケの会からのお願い

日本人類学会のアイヌ遺骨研究を考える会の略称が
「チャランケの会」になりました。

11月上旬から12月中旬にかけて全国の12大学にあるアイヌ遺骨が「民族共生象徴空間」(ウポポイ)に設置された「慰霊(・研究)」に移送されます。
北海道アイヌ協会が遺骨受け入れと、それを終えるカムイノミ・イチャルパを11月2日と12月14日に行うというマスコミ報道もありました。
アイヌ遺骨問題の本質と歴史認識が後景に退いて、「ウポポイ」と「慰霊施設」への賛辞と印象操作のキャンペーンが予想されましたので、チャランケの会として急きょ11月1日付「声明」をだし、国や大学、日本人類学会などに対する強い謝罪要求と、遺骨問題の責任があいまいにされていることに対する抗議の意志を表明しました。
この声明は拡散していただければと思います。
マスコミにも送ります。

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2019年11月1日

声   明

日本人類学会のアイヌ遺骨研究を考える会(略称・チャランケの会)
共同代表 川村・シンリツ・エオリパック・アイヌ (旭川アイヌ
協議会会長、アイヌ・ラマット実行委員会共同代表)
木村二三夫 (平取アイヌ遺骨を考える会共同代表)

 文部科学省と北海道大学、東京大学、京都大学など全国12大学は、アイヌの墓を暴いて盗掘し、留置してきたアイヌ遺骨1574体とバラバラになった遺骨346箱を、今月上旬から12月中旬にかけて、「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の「慰霊(研究)施設」に移送し、北海道アイヌ協会が同施設で11月2日と12月14日に遺骨の受け入れとそれを終えるためのカムイノミ・イチャルパを行うという。その遺骨の利用について、すでに北海道アイヌ協会と日本人類学会、日本考古学会の3者は研究利用を進める方針を「報告書」(2017年4月7日)で公表している。

 政府は、この政策を「尊厳ある慰霊」と称するが、コタンを破壊し、先祖の遺骨を盗掘した責任は一切問われずに無視され、誰も謝罪をしていない。また、140年近く人間扱いされずに「人骨標本」に貶められ、「滅びゆく民族」と侮辱され続けてきた先祖の遺骨は、改めて遺骨のDNA研究に利用する準備が進められている。これが先祖を癒す尊厳ある慰霊とどうして呼べるのか。

 墓を暴く盗掘は、当時の刑法でも重禁固刑となる重大犯罪である。それがアイヌモシリ全域のコタンで繰り返された。しかし、今日までその責任は不問とされ、責任ある者が誰も謝罪をしていない。なぜ、責任が不問なのか!なぜ、人間として当たり前の謝罪ができないのか!私たちは、国や大学、そして盗掘や差別研究を実行した学者の系譜にある日本人類学会に対して、この非人道的な行為についてアイヌ民族とその先祖に対する心からの反省と謝罪を要求する。

 この無責任な事態は、遺骨がアイヌ民族であることに起因している。それはアイヌ遺骨差別研究が、国策研究としてアイヌ民族に対する植民地政策の一環として行われてきたからである。

 この間、アイヌ民族が盗掘された遺骨を取り戻すのに、裁判に提訴しなければならず、また、アイヌ遺骨の返還ルールと返還条件を国がアイヌ民族におしつけてきた。一体全体、アイヌ遺骨は誰のものなのか!誰が被害者で、誰が加害者なのか!アイヌ民族の自決権の蹂躙は、国によって継承されている。

 私達は、先祖の尊厳ある慰霊のために、国が謝罪し、アイヌ民族の声に耳を傾けて、国の責任で遺骨を各地のコタンの土に再埋葬することを要求する。先祖をコタンに迎えることは、コタンのアイヌ民族の歴史の復元でもある。

 日本人類学会は、アイヌ遺骨差別研究を継承している。私たちは、アイヌ遺骨問題に対する謝罪や実態解明などを要求して、先月、日本人類学会にチャランケを申し入れたが、同学会は自分たちの研究に都合の良い声にだけ耳を傾けるようだ。このような非人道的な歴史的犯罪に対して謝罪もなく、当事者から批判の声があがることは当然の事であり、そのような声に耳を傾けることは、学会が自らを省みて過去を反省し、当事者との信頼関係を構築する努力として不可欠である。この「研究ありき」の姿勢で、琉球人遺骨返還訴訟で原告への返還否定論で介入した。この傲慢な姿勢は、アイヌ遺骨盗掘や差別研究に対する無反省の証拠であり、そのような研究者の研究に先祖の遺骨を委ねることは断じてできない。

 私たちは、アイヌ遺骨問題に対して、国や日本人類学会などに謝罪を要求し、アイヌ民族に対する植民地支配の歴史の実態を究明し、アイヌ民族の自決権の確立に向けて取り組みを広げたい!
「盗んだものは、謝罪して、元に戻せ!」アイヌ民族の先祖の尊厳ある慰霊を実現したい!

以 上