第88回 足腰弱者の心得

毎年、誕生日に定番の店で注文する「カルビクッパ」を食べないまま64歳になった。家では、歩行器を使ってのつかまり歩きもでき、いつもより少しパワーはないものの、少しは転倒の恐怖も和らいだ。でも、車いすに長時間乗るのは、まだ打撲した穴が痛む。トイレもなんとか行けるようになったが、外出先のトイレはトリッキー。とある駅では、バリアフリートイレの目前で結構長めの階段と遭遇。あまりの滑稽な風景に、車いすを押す介護者と笑いこけた。これ、誰がどう考えてん?

トイレの戸は重くてもだめだし、体のバランスがとりにくい引き戸も厳しい。
実は家の戸もすべて引き戸タイプなので、そろそろ手を加えたいのだが。

一日の大半をベッドで過ごした少し前も、レンジフードのモスキー音が激しくなり、コンロを付けたら自動運転するものに入れ替えたばかりだ。万が一の発火を想像すると、これは「我が家だけの我慢」では済まないので財布の中身は確かめなかった。築20年のマンションは、毎月のようにどこかのお宅でリフォーム作業が行われている。

トイレの戸は「私とわんこだけの我慢」で済む。が・・・トイレを開けっ放しにすると隣の寝室に入れない。困ったもんだ。
で、トイレの向かいの息子の元住処にわんこと越した。これなら、歩行器があれば行き来ができる。でも、この部屋はエアコンが(+_+)。息子がひとり?暮らしで出て行った頃から壊れたままだ。わんこもトイレシートの場所を覚えたところではあるが、酷暑前に自分の部屋に戻るかエアコンを迎えるかだ。
まったくぅ、身が重くなるに反して、財布はどんどん軽くなっていくぅ( ノД`)

いずれにせよ、この「外出先で使えるトイレがあるかないか」「自分で用が足せるかどうか」は足腰弱者の人生を大きく左右する問題だ。

私がベッドの主となり、不覚にも廃用症候群(必要以上の静養は下肢筋力を低下させる。進行すると関節拘縮や誤嚥性肺炎にも至る)になりかけ、転倒を繰り返した時、同じころ認知症の母が1年の引きこもりの末、おむつ生活に入った。父の手を借りて、家の中はなんとか移動できていた母の足が、パタンと動かなくなった。医師は廃用症候群と診断し、リハビリの強化を指示するだけ。
もう人の言うこともわからなくなっている母にどうやってリハビリを促すんや?
リハビリ特化型のデイサービスを利用するにも、介護保険は申請に時間がかかる。

だから、お声がけしていただいていた間に外に出ないから・・・なんてほざいてみても後の祭り。後手後手に動く両親の変化にいち早く気付けるように見守ること。これが動きづらい娘の役まわりなんだと5年かけて悟った。

96歳の父が94歳の母のおむつ交換をして1か月。私は今のところ、強靭な精神と肉体を持つ父のDNAより、うかっと廃用症候群になる母のDNAの方が色濃く出ている気がする。ぴんち(+_+)

自分に優しく他人に甘く歩んできたけれど、両親が歩かせてくれた足。細くても曲がっていても痛くても最期まで動かさなきゃね。

貸してくれる人の手を取り、自分の歩みを止めないこと。それが先行く親への孝行なんだとこの年になって思う。

 

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第23回 私、めっちゃ欲張りでして…(2021年8月27日) 
第22回 「福本さん」と呼ばれた場所(2021年8月12日)
第21回 働くご縁がございました。(2021年7月26日)
第20回 働かない人生からの…(2021年7月8日)
第19回 専業主婦というお仕事 その4 私たち、こうして育てられました
(2021年6月15日)
第18回 専業主婦というお仕事 その3 こうして母になりました
(2021年5月31日)
第17回 専業主婦というお仕事 その2 こうして福本千夏になりました
(2021年5月11日)
第16回 専業主婦というお仕事 その1 永久就職ではない
(2021年4月27日)
第15回 ロミオとジュリエット(2021年4月13日)
第14回 乙女の経験8 ○○家を継ぐ子を産んでくれさえすれば
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第13回 乙女の経験7 そこに愛はあるんかぃ?(2021年3月11日)
第12回 乙女の経験6 福祉女子から障害女子に 変身トォーッ (@_@)
(2021年3月1日)
第11回 乙女の経験5 鏡越しのオチンチン(2021年2月13日)
第10回 乙女の経験4 社会福祉ってなんやねん(・・?
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第9回 乙女の経験3 女らしい字とは何ぞや(・・?(2021年1月19日)
第8回 乙女の経験2 カイロと痴漢(2021年1月5日)
第7回 ファーストキスもラストキスもご用心あれ(2020年11月30日)
第6回 母と暮らせば その3(2020年11月16日
第5回 母と暮せば その2(2020年11月2日)
第4回 母と暮せば(2020年10月15日)
第3回 悲しみごとも よろこび事(2020年10月1日)
第2回 この夏は(2020年9月14日)
第1回 初めまして(2020年8月28日)

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福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

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