第87回 雨の中のお馬さん
珍しく風邪をひいてしまった。「(^^♪咳・鼻水・熱には○○が効く」で有名な風邪薬も効かないので、家の前の病院に駆け込んだ。コロナとインフルは陰性。抗生物質と咳止めを処方された4日間。食欲もなくお粥とスポーツドリンクを息子が運んだ。「おかん、中途半端に弱んな。発熱っていうから39℃ぐらいで、うんうんうなってんのかと思って来てみたら38℃切っとる」
あっはは。そのぶー垂れ顔が母は一番元気になるんよ。「私、平熱が低いねん。わんこの散歩よろしくね」と布団をかぶる。
ちなみに、うちのわんこは、飼い主寝込めば、自分もヘッドでごろんコロン。何の要求もしない。それだけに不憫だ。
こやつがいることだけが、私のただ一つの存在理由となった。
まっこんな人生もありだわさ。とのんきに一週間、同人誌の締め切りを気にしながら、寝るに寝て風邪の諸症状は収まった。
ここから、怒涛の転倒騒ぎが始まるなんてこの時の私は知る由もなく(+_+)
「さあ」っと立ち上がり、着替えようと上半身に力を入れた瞬間「どたん」と背中から後ろに落ちる。椅子に座り損ねてコントのような尻もちをつく。何かに足をすくわれたようスコーンと体が横や後ろに倒される。10日間で4回も床に叩きつけられ、若いころにはすぐに出た痣やこぶが日を追うごとにじわじわ増えていく。
4度目の転倒時、夜10時半・歩けなくなる怖さと立ち上がれない痛みで再びSOS。「もーう、俺何したらいいん」と40分後現れた息子にトイレとベッドまでの移動とシップ張りと服薬準備を命じた。「また、いつでも呼べ」いつになく優しい一言に自分が年老いたことを感じる。
「うーんううーん」うなる母を横目に「おかん何考えとるん?はよ言え。電車なくなる」
「落ちてる運を上げる方法や」真顔な母に「転ぶのは・・・そうか。気を付けててもこける時はこけるしな。運なあ?」決して逆らわない息子。向き合うと、なんだか自分が大きな子供のようだ。
「たっ宝塚記念買っといて。私は落ちまくってるから、なんかぶっちぎりそうな馬」徐に言う私をさらに心配したのか「えっ競馬なんてしとったっけ」
「いや・してない」私は胴元だけが儲かるシステムの賭け事には手を出さない。だから、馬券はおろか宝くじも買わない。
「けど、なんか当たりそうな気がするねん」と財布にあった3枚の千円札を託す。「わかった。レース前に馬の名前メールして」
レース当日、テレビにかじりつく。ファンファーレに心躍る。ゲートから一斉に馬たちが飛び出る。
「イケー」体中に力を入れて叫ぶ。「イケーいっっけぇー」アドレナリンMax。あははー。結果は惜しくも3着・でも、こんなにわくわくしたのも久しぶりだ。雨の中、お馬さんたちが私の悪運を持ち去ってくれました。
「カワイカッタなっちゃんも、すっかりオジサンになったな」若いころ並んで叫んだ夫の写真が笑っている。