香田証生さんを思う。
 
おんな組世話人 辛淑玉
 

 「彼ら(武装グループ)は、なぜ日本政府が法を破ってイラクに自衛隊を派遣したのかと尋ねています。小泉(純一郎首相)さん、彼らは日本政府に自衛隊の(イラクからの)撤退を求めています。さもなくば、僕の首をはねると言っています。すみませんでした。また日本に戻りたいです」
 テレビを見ながら、胸がかきむしられるとはこういうことなのかと思う。
 目の前に、殺されようとしている人がいる。
 短パンがどうだとか、現金をわずかしか所持していなかったとか、そんな報道がどれほど必要なのか。
 その報道内容は、プー太郎が面倒なことを起こしてくれて迷惑だ、というようにしか私の耳には聞こえない。
 家族に対する嫌がらせも増大している。
 殺される恐怖の中にいる一人の青年の命に、なぜ、思いを致せないのか。
 生きて帰ってくることを拒むかのようなこの空気こそが、かつての集団自決の素地ではなかったのか。
 すぐさま自衛隊の撤退を拒否した政府の姿勢は、この国は、何か失敗したら決して守ってはくれないという、絶望にも近い思いを人々の心に宿した。その罪は計り知れないほど大きい。

10月27日国会前

 人間関係に淡白な小泉首相は、きっとこの手の「面倒なこと」が嫌いなのだろう。いとも簡単に、見殺しにするというメッセージを送りつけた。
 こうやって社会は壊されていくのだ。
 いま、日本人であるということは、いくらその人が良心的で愛にあふれていたとしても、国境を越えたとたん、日本人であるというだけの理由で殺される危険を背負うことを意味している。
 なぜなら、日本人は殺戮に加担する政府を温存しているから。
 この状況こそ、罪の無い人々を殺戮する米政府に尻尾を振ってついていく日本政府の大罪ではないのか。
 助けよう。
 どんな困難があっても、最後まで望みを捨ててはいけない。
 そして、祈るだけではなく行動をしよう。
 命を助けたいという、一人ひとりの意思表示が、絶望の空気を変える唯一の手段だからだ。
 証生さん。
 あなたの名前の通り、生きている証は、生き続けることだからね。
 私は、最後まで声をあげるよ。

   2004年10月29日