時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
地方六団体におかれましては,児童福祉の充実のためにご尽力されていることに敬意を表します。
私たちは、日頃、それぞれの立場で、児童虐待の防止に取り組んでいる者たちですが、8月24日付の貴団体の改革案を拝見いたしましたところ、そのご提案の中で、廃止して税源移譲の対象とすべき国庫補助負担金の中に、児童虐待・DV対策関連費(児童保護費等負担金、児童福祉事業対策費等補助金、婦人保護事業費補助金など)が含まれていることに、以下に列記する理由から、強い危機感を抱いています。
1.児童養護施設等に措置され、生活を送っている子どもたちの大半は、保護者からの虐待を経
験しています。これらの子どもたちの最低限の生活の保障は、国・社会全体が担うべき責務で
あり、地方による格差なく国による統一的な措置が確保されることが望まれるべきものと考え
ます。
貴団体のご提案においても、生活保護は地方による「格差なく国による統一的な措置が望ま
れるもの」として、今回の移譲対象からは除外されているにもかかわらず、子どもたちの生活
を保障する性格を持つ児童養護施設等への措置費が移譲対象とされているのは理解に苦しみま
す。
2.例えば、児童相談所の児童福祉司の配置状況を見ると、各自治体間で著しい格差が現に存在
します。
厚生労働省の調べでは、本年5月1日現在で47都道府県・13指定都市のうち、全体の61%に
あたる37自治体が児童福祉司の配置について地方交付税基準すら満たしておりません。
また、児童福祉司一人が担当する人口数には,最高水準(児童福祉司1人当たりの管轄人口
が最も少ない)の青森県と最低水準の千葉市や岐阜県の間には約4倍の格差が存在します。
このような現状の中で、仮に児童虐待・DV対策関連の補助金が地方に移譲された場合、こ
れらの取組について、地域間格差の拡大にさらなる拍車がかかることを強く危惧します。そし
て、その結果、子どもの生命が危機に瀕する重大な恐れを禁じえません。
3.さらに、保護者からの虐待を受けている子どもには、自ら訴える手段を持たないことはもと
より、保護者による利益代弁が期待できません。
仮に、こうした子どもたちに対する十分な援助が提供されなかったとしても、利益代弁者が
不在という状況で、適切な住民監視が機能しないのではないかと大いに懸念いたします。
虐待の相談件数は年々増加の一途をたどる一方で、虐待の対策はいまだ緒 についたばかりです。
本年10月1日から施行される改正児童虐待防止法では、地方自治体の責務が大幅に拡大されることとなっており、たとえば子どもや親の治療・ケアに関する新たな施策の実施などより一層の取組が必要となります。
かけがえのない子どもたちの命の安全、心身の健全な発達がかかっています。決して停滞の許されない、地域間格差のあってはならない分野です。
以上の理由から、私たちは、児童虐待・DV関連の補助金を、現時点において地方公共団体へ移譲することに関しては、再考いただくよう要望する次第です。
なお、追って、私たちとしては、都道府県・政令指定都市の首長に対して本件に関する公開質問状を提出することとしていますので、申し添えます。
日本子どもの虐待防止研究会
児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク
子どもの虐待防止民間ネットワーク
特定非営利活動法人 児童虐待防止協会
社会福祉法人 子どもの虐待防止センター
特定非営利活動法人
子どもの虐待防止ネットワーク・あいち
エンパワメント・センター