第320回 アメフト事件はなんの教材?

中山千夏(在日伊豆半島人)

はあああ、出るは溜息ばかりなり。
サコちゃんの話でよくわかりました。
結局、森友学園問題は、政府や自治体の学校教育行政のゆがみと、学校経営の商業化から出るべくして出てきた問題なのね。
それに加えて、総理の権力私物化、それに従う役人のひどさ……まったく、どうにもこうにも、手がつけられない散らかりよう。はあああ。

大学といえば、「日大アメフト悪質反則」事件。
スポーツに冷たい私でさえ、ついググってしまう大騒ぎ。
加害選手の記者会見もノーカット版で見ちゃいましたよ。

で、事件そのものについて言うと。
最初に「悪質反則」場面(関大のひとが撮ったという)を見て、こう思った。
うわ、「犯行」バレバレじゃん! 
いくらコーチに言われて、それをやらないと使ってもらえないからって、ハタチのおとなが、こんなバレバレの反則、やるぅ?!
続いてその後のこと(退場になった直後にテントで号泣していた、とか、日大の出方とか、コーチや監督の弁とか)をちょっと読んで、それから会見を見て、思った。
このコ、カルト宗教で犯罪行為して、ハタと目覚めた若者みたいだなあ。
話を聞いてると、ほんと、監督が教祖、コーチがお告げ役みたい。ウエからの重要な指示が多分に「以心伝心」であることも含めて、このチームはカルト集団だと思うよ。
そう見ると、加害選手の「犯行」も、夢から醒めたような謝罪会見も、実によく納得できる。

展開について言うと。
加害選手、被害選手、どちらについても「保護者」の存在が大きいのにびっくり。
大学生の入試に親がついてくる、と聞いたのはずいぶん昔だけど、部活(というかどうか知らんけど)のモメゴトにも出てくるんだ、と唖然。
両保護者ともマスコミ扱いに長けているのにもびっくり。
加害側は会見にも弁護士をつけて、完全に加害選手を守り抜いた。手抜かりナシ。
むろん、当人の肝の座りぶりも、とてもシロウトとは思えない。好感度バッチリ。
被害側父は、加害選手の「救済」に乗り出すなど、とてもタダモノの動きとは思えない、と見ていたら、維新かなんかのトップ当選大阪府議だって。なるほどね。

要は情報社会。大学も「広報」が活躍している。ネットには「日大アメフト問題で分かった「組織を殺す広報」「生かす広報」の差」なんて記事があったよ。執筆は「PRコンサルタント」の某さん。この事件も宣伝を学ぶ教材になってるのね。
シロウトもマスコミ慣れ、宣伝慣れして当たり前だ。
驚く私はズレている。

それにしても。
「教育」の見地からの意見は、報道にもSNSにも、私が見た限りひとつも無い!
報道はもちろん、大学も当事者選手の保護者も「保護者会」も、そんなの関係ないって感じ。
元日大全共闘の連中まで乗り出してきたらしいけれど、これは例のごとく、大学当局の責任追及みたいだし。

大学生にとって、部活(というかどうか知らんけど)はどうあるべきなのか、大学のなかに、カルト集団的組織があっていいのか、ワルイおとなにワルイことせえと言われても、自己判断でやらない、そんなひとを育てる教育を、中高からやらんといかんのと違うか、そして大学では大学生の自主性こそ、鍛錬されんといかんのと違うか。

そういう議論がどこ見ても無い。
これでいいのか〜これでいいのか〜ボンボンバカボンバカボンボン、と思わず歌うワタクシでありましたぁ。