サコ:サコで〜す!
チナ:チナで〜す!
二人:あわせてサコチナ、どうぞよろしくっ!
チナ:まだ吉本からスカウトされませんが(笑)
サコ:希望を胸にがんばりましょう、はははは。

チナ:ところで、驚きました。最近どうもスゴちゃん(辛淑玉)を見ないと思っていたら、亡命しておりました! 

→レイバーネット
http://www.labornetjp.org/news/2018/1520247181308staff01

サコ
:うぐぐぐぐ(;´∀`) 大手新聞社も記事にしていましたが、新聞社によって扱い方がずいぶん違いました。
うちらおんな組の代表は、シンさん、キョンちゃん(朴慶南)、チナさんの3人ですよね。
チナ:そうでんがな。ある時、サコ、キョン、私が旅先の一夜、「なんかやろう!」と盛り上がったのがキッカケ。で、キョンちゃんがスゴちゃんをひっぱってきて、私と3人でいろいろ相談して始めたわけよ、おんな組。
サコ:そのひとりが亡命したのに知らなかったんですか!
チナ:めんぼくない(;´∀`) でもね、そういう組なの(笑) 代表と言っても、とりあえず、みたいなもんでシバリがゆる〜い(笑) ま、スゴちゃんのことだから、いい留学して戦闘準備万全で戻ってくる・・・と思っていたところ、今朝(9日)の朝刊で〈BPO(放送倫理・番組向上機構)勧告 「ニュース女子」人権侵害を認定〉のニュース。
サコ:やりましたね! シンさんへの人権侵害も認定されました。
チナ:当然の結論。東京MXテレビは番組打ち切りを決めたし。スポンサーの化粧品会社はまだガンバッテルようだけど、へんなの。ともかく一応、全面勝利。強いね、スゴちゃんは。必殺仕置人だ(笑)
サコ:うは(笑)
チナ:そこでグータラわれらとしては、これを機会として「日本人」とはなんなのかに迫りませんか?
サコ:やりましょう! 私も最近、世の中見ていて、なんかそこのところをハッキリさせなきゃ、と思ってます。

◆在来種・外来種?

チナ:という時期も時期、我が伊東市でおもしろいことが起こったの。最近、虎の威を借る保守党市議、それも若いのに議長に抜擢されたオノコが、「所詮外来種は外来種に過ぎない」とフェイスブックに書いて、市民の間でちょっとした騒ぎになったの。
サコ:外来種・・・?
チナ:伊東生まれじゃないのに伊東に住み着いた市民のことを例えてるって。
サコ:ひえええ!
チナ:いや、よく読むとそうは言っていないし、ご当人も否定しているんだけどね、状況がね、そう「誤解」されるのも無理ないの。今、あるメガソーラー建設に反対する動きが大きくなってるのね。なんたって観光地の山ひとつ削ってソーラー板張り巡らそうというんだから、私も知ってびっくり。いつになく反対運動が大きくなってる。議会でも反対意見が多い。それで、推進していた保守派は苦戦に入った。どこの地域でもそうかもしれないけど、環境について市民運動するのは、移住組が多いのよね。ただ今回、反対運動が大きくなったのは、旧来の地元民も反対に加わったからなのね。それへの苛立ちが「所詮外来種」発言になったのかもしれない。それにしてもこれは中央の保守党が全国的に「外来種」差別をあおっていることのひとつの表れだと思ったな。
サコ: いま、どこの自治体も、財政逼迫の打開策として、外部からの移住者を増やすことに知恵を絞っています。税収を増やすための手堅い方策ですからね。それに、移住者が多いということは、その町が住みやすいとか魅力がある証にもなります。なのに、「外来種」なんて呼び方で排除しようとするなんて、なんとお粗末な市議さん。
チナ:「所詮・・・でしかない」というところに悪意があるよ。でもね、差別用語のなかでは「外来種」はなかなかいいよ。こちらが「外来種」ならあちらは「在来種」なわけだからね。「在来種vs外来種」の構図。これが「日本人vs在日外国人」「白人vs黒人」みたいになると、差別の本質が見えにくくなる。在日外国人はよいか悪いか、黒人はよいか悪いか、というお題が、どうしても出てきてしまうから。
サコ:そうですね。婚姻や移動・移住の自由が広く認められている現代社会において、白人とか黒人、黄色人種などという人類の生物学的特徴による「人種」という定義や区分は厳密には不可能だということで、少なくとも学術的には使わなくなっています。巷ではまだ根強く残っていますが、定義のできないものだから、差別される側の評価や吟味に集中してしまって、なんだかわけわからんようになります。
チナ:そうそう、人種や民族のややこしい森に迷い込んでしまうのよ。その点、「在来種vs外来種」はいいよ。論点が明確に絞られる。
サコ:ヘイトスピーチの根源も、「在来種か外来種か」というところですものね。
チナ:そうなんよ。だから、この際、ほんとにいい思考ツールを提示してくれたわけだから、伊東のトンデモ市議も私の役に立ったわけよ(笑) 差別されて初めて、実感としてわかるよ、在日の友だちが「税金ちゃんと払ってまっせ、選挙権はもらえんけどね」と怒る気持ちが。私も市民税払ってまっせ、それなのに市政に口出すな、と言われるとムカつくもん。
サコ:まったく! 
チナ:というわけで、ヘイトスピーチは在来種による外来種差別である、という設定で話をしましょう。
サコ:まず、そういう対立構造が成り立つのかどうかってことからが問題です。

◆どのくらい在来種?

サコ:そもそも「伊東の在来種」って、どういう人達なのでしょうね。私が住んでいる京都では、7代続いてやっと「京都人」、つまり在来種と認定される。江戸時代に地方出身者が押し寄せて世界最大の都市となった江戸では、三代続けば「江戸っ子」なんですよね。この定義でいえば、シン・スゴさんは「江戸っ子」だと自分で言ってる(笑)。東京の在来種ですね。
チナ:あああ! それでいくと私はやっぱり放浪種だ。祖父母の代から住んでいた場所なんかひとつも住んだことないもん。
サコ:あは、チナさんは、点々と移住生活をする旧石器時代人ですね(笑)。
在来種か外来種かという区分は、生物や植物では交雑の有無が大きな問題となりますが、京都や江戸の「在来種」とは、交雑の有無など問題ではなく(そんなことで区分できない)、そこで暮らした時間の長さ、言い換えればその土地の風土や伝統文化への馴染み具合で判断されているのだと思います。
チナ:長いほうがエライのなら、たとえばアイヌ民族は日本で一番エライことになる。
サコ:はい。
チナ:それなのにいろんな権利を剥奪されている、返せ、というのが現在のアイヌ民族運動の主張だし、世界中の在来種先住民族の主張なわけだ。
サコ:そうですね。
チナ:ちょっと交雑ということも念を入れて押さえておきたいね。伊東ってとこは流刑地としての歴史があって、日蓮さんが一時流されて住んでいた話なんか、在来種の誇るところでもあるし、あ、頼朝さんは伊東で伊東の女子との間に子をなしたみたいだよ、そうそう、船建築士の三浦按針(ウイリアム・アダムス)だってしばらく住んでたし、なにしろ海路に面しているからね、有名無名とりまぜて外の人間がよく来ている。だから在来種ではあっても多少とも雑種の可能性は高いんじゃないの、とも思った。
サコ:そりゃそうですよ。「伊東の在来種」なんて、生物学的な定義は無理なのです。となれば、京都や江戸みたいに「5代前からずっと伊東に暮らしている人」とか「3代前から伊東出身者以外とは婚姻してない家系」とか、自分達で勝手にテキトーに決めるしかない。それは、アメリカにおける「白人」「黒人」の定義のような、非科学的な“物語”でしかない。
チナ:差別ってのはもともと科学的な根拠がない区別だからね。
サコ:「伊東の外来種」という表現は、「自分達より後に伊東に住み着いた人達」を自分達とは区別したい人達がいて、あるいは区別したい理由があってこそ、成りたつわけですね。でも、両者の婚姻関係が禁止されない以上、時の経過とともに両者が交雑するのは止められないのだから、「在来種」か「外来種」かの区分は、きわめて賞味期限の短い話です。
「人種」も同様で、すでに賞味期限が切れているはずなのですが、人種差別はなかなかなくならない。で、おんな組は「賞味期限が切れてますよ」って、地道に言い続けているわけですよね。
チナ:ふむふむ。

 

サコ:同じ意味で、「日本人」だって、生物学的に区分できる集団ではないので、何をもって「日本人」とするのかの定義は簡単ではありません。
チナ:だよね。弥生時代や古墳時代には朝鮮半島からの渡来人がたくさん移住してきたわけだし、縄文人だって日本列島で生まれたわけじゃないでしょう。
サコ:あはは、日本列島の土の下から「日本人」がニョキニョキ生えてきて、純粋培養されたみたいに思ってるのかなというような学生が時々います(;^ω^) あるいは、大陸のどこかに「原日本人」みたいな集団がいて、ある時期どっと列島に集団移住してきた、みたいに思っている人達もいますね。『日本人はどこから来た?』みたいなタイトルの本、いくつもありますからね。
チナ:あ、私も昔そんなの読んだことある。でも、いろいろ考えて、今は、設問自体がおかしいんじゃないか、と。どうしても問を立てるなら、いつかどこかからきた人間がいつ日本人になったのか、だと思うよ。
サコ:ご名答!! 日本列島に住み着いた人々が、やがて「日本人」になっていくのです。
日本列島に人類が住み始めたのは、いまから4万年ほど前。旧石器時代の寒い時期に、海水面が低下して列島が陸続きかそれに近い状態になって、大陸から人類やいろんな生き物がやってきました。沿海州の方から北海道へ、朝鮮半島から九州へ、さらに南西諸島から九州へなど複数のルートが確認されています。あちこちから来ているので、「日本人はどこから来た?」なんて言われても、困る(;^ω^)
1万6000年前頃から地球の温暖化が始まり、縄文時代の幕開けとなります。温暖化にともない海が上昇して日本列島が形成されます。大陸との人的交流がなかったわけではありませんが、基本的に縄文人というのは、旧石器時代に大陸からこちらにやってきて、住みついた人々の子孫です。
弥生時代から古墳時代、飛鳥時代と、西日本を中心に朝鮮半島からの移住者がけっこういます。それぞれの時代において、新たにやってきた集団をわれわれ後世の研究者が「渡来人」と呼んでいます。でも、紀元前6世紀頃、弥生時代の幕開けの時にやってきた渡来集団の子孫は、渡来系の顔つき体つきを受け継ぐでしょうけれど、古墳時代にはもう「在来種」の側でしょ?「いつまで“渡来人”って呼ぶねん?」って思います(笑)
だから、在来種と外来種の区分も、簡単ではありません。なのに、なんとなく自分は日本の在来種、純粋日本人だと思っている人、多いんじゃないでしょうか。とりあえず、自分が知っている先祖に、明らかな渡来人がいなければ、日本人だと思うでしょうね。でも、自分のアンテナにひっかかる範囲なんて、わずかなものです。

◆自分のことを考える

チナ:それにつけても外来種差別というものは、自省の足りなさからくるんだ、とつくづく思うね。自省ってのは自分を考える、ってこと、我を知る、ってことなんだけど。
サコ:つまり、私らだと、「日本人」とは何なのかをきちんと学ぶ、ということですね?
チナ:そうそう。私、何年か前から、アイヌのひとたちの人権運動をほんのちょっと手伝ってるのね。
サコ:はいはい。
チナ:それで、署名集めがあって、それを若い友人に話した時、こう問われた。「今、純粋なアイヌのひとって、どのくらいいらっしゃるんですか?」
サコ:おお。その「純粋」って、「純血」ということですよね。
チナ:わ、昔の私みたい、と思った。だいたい関東以西育ちで教科書でしかアイヌを知らない人は、アイヌは絶滅した、と思っているのよね。少なくとも「純粋なアイヌ」はいない、と。そこで私はこう反問した。「純粋な日本人って、どのくらいいると思う?」
サコ:あはははは。
チナ:そのひとも絶句して考えちゃった。まったく差別には反対、というひとなのよ。でもこういう意識が差別につながるんだと思う。おもしろいよね、アイヌ集団の純粋を疑いながら、自分が属する集団の何割くらいが純粋か、考えない。日本人の特色なのか、それとも多数派民族の特色なのかわからんけど。さっきのサコちゃんの話みたいなことを、もっと学校でよく教えれば差別も少なくなると思うな。
サコ:そうです。「純粋な日本人」なんてあり得ないということを、日本人は学ばなくてはいけませんね。
たとえば、平安時代に編纂された『新撰姓氏禄』(815年成立)は、畿内在住の約1000の氏族の先祖伝承を提出させたものですが、その先祖伝承は、わかりやすくいえば皇室系・在来系・渡来系の3種に分類されています。奈良時代以降、大陸からの新たな移住者は激減していますが、9世紀初頭の段階で渡来系と分類された氏族が、どれくらいいると思いますか?
チナ:むむむ、わからん。8世紀初頭の『古事記』読んだ感じからすると、えらく多そうだ、と思うけど。
サコ:皇室系・在来系・渡来系は、ほぼ同数です。
チナ:ほおお!
サコ:渡来系、予想したより多いでしょ。この分類は血筋とは関係ありません。異なる分類に属する氏族同士でも、婚姻は自由でした。たとえば桓武天皇(皇室系)と藤原氏(在来系)と百済王氏(渡来系)の三者は、頻繁に婚姻関係を結んでいます。だから、血筋による分類なんて不可能です。
ここで渡来系と分類されているのは、「自分達の先祖は大陸から渡ってきた〇〇だ」という先祖伝承を語りついている氏族なのです。たとえば、秦氏は、応神天皇の時に渡ってきた百済の弓月君を先祖とし、有名な坂上田村麻呂を輩出した東漢氏は、後漢の霊帝の末裔と称しています。そうした伝承が事実かどうかは別として、何百年も前の渡来伝承を大切に語り継いでいる人々、渡来人の末裔であることを自分のアイデンティティーとする人々こそが「渡来系氏族」なのです。
チナ:なんか在日二世三世の友だちが彷彿とするなあ。最近、まさに朝鮮半島人の末裔であることを、自分のアイデンティティーとしているコが多いもの。
サコ:東日本や南九州には、朝鮮半島からの渡来人はあまり移住していないようですが、統計学的にいえば、青森県と鹿児島県のまったく無縁な人同士でも、600年さかのぼると共通の先祖がいるのだそうです。そうだとすれば、今日この列島に住む人で、弥生時代以後の渡来人の遺伝子を受け継いでいないはずはない。
そうすると、先祖が渡来人だという伝承を語り継いでおらず、あるいは知らなくて、もとから列島に住んでいたと思っていた人達が「在来系」「皇室系」という人々。つまり、自分が日本人だと思っている人が「日本人」なのだということです。
チナ:うわ、微妙な話! 古今、庶民は家系を語り継がないでしょ。私だって、せいぜい3〜5代前しか、それもオボロにしか知らないもんね。すると、自分は日本人だと疑問無く思っているひとびとの中核は庶民ってことになる。そしてヘイトスピーチに加わる多くは庶民。少しは、政治的に煽る庶民じゃないひともあるけどね。ううむ、だから、そういう知識人やなんかに利用されないように、われら庶民は日本人とはなにか、歴史をよう勉強せなアカン!
サコ:そーだ、そーだ!

チナ:ということで、一応、シメて、次回にもう少し、つづけましょ。
サコ:そうしましょ。

(次回に続く)