第281回 残暑お見舞いアゲハ

中山千夏(在日伊豆半島人)

サコちゃん、北海道でのお勉強に続いて、8月30日、永六輔さんを送る会出席、お疲れさまでした。
私は永さんを送る会だけで、ぐったり疲れてしまいました。サコちゃんは、だいじょうぶだったでしょうけど。

そもそも、もはや都会仕様の人間ではなくなっているのですね。渋谷だの青山だの、ビル街に群衆溢れ車溢れる場所に入り込むと、くらくらする。
おまけに青山斎場は、たいへんな数の参会者。あれ、何人ぐらいいたの?
しかもその多くが、ひさしぶりに会う知人なのよねぇ。わ、あのひといる、このひといる、わ、年取ったなあ、う、あのひと誰だっけ、ごあいさつしないとまずいんじゃないか、え、あのひと私を呼んでる、あ、こっちのひとも合図してる、あわわわわわ〜〜〜と頭のなかがえらくとっちらかってしまって、はああああ、くたびれた。
翌日、伊東に帰り着き、改めてしみじみ感じ入りました。おおお、海がある、緑がある、セミの声、小鳥たちの声・・・イナカはいいなあ!

というわけで、それから2、3日は使い物にならず。もっぱら、パソコンの前に漫然と座りつつ、横の窓辺をとおりかかるアゲハチョウを眺め暮らしておりました。
実は、かつてうちの周囲には、唖然とするほどたくさんのアゲハが飛んでいました。チョウ好きの友人が遊びに来て感嘆し、次の夏には大きな虫捕り網を持参したくらいです。チョウには決まった道がある、この家の周りはその道になっているんだ、と彼から教わりました。
それがなぜだかここ何年か、ほとんどチョウを見ない夏が続きました。どうしたんだろう、放射能のせいかしらん、など心配していたのですが、どうしたことか、この夏には、かなりたくさんのアゲハが訪れてくれたのです。

見ていると、何種類かいるようです。一見、どれも大きな黒いチョウなのですが、よく見ると違う。目をこらし、図鑑を調べ、よっこらしょと動いて写真を写してまた調べしたところ、最低、4種類はくることがわかりました。


写真@

写真@はモンキアゲハ。あ、写真はあくまで確認のために撮ったので、ひどいもんです。アゲハというやつは、ぜんぜん停止してくれない。花(クサギ)のミツを吸っている(らしい)時は動きが鈍るが、それでも、上側の二枚の羽根(前翅というらしい)はずっとびりびり動かしている。そういうモノを窓ガラス越し、ズーム最大、手持ちデジカメでバシャバシャ撮ったシロモノで。でも、おおむね違いはわかるでしょ?
最初、このアゲハの白い紋に気がついて、あれ、こんなアゲハもいるんだ、と思ったのが、今夏のアゲハ研究(笑)の始まりでした。粋だよねぇ。これは♂で、♀は後翅の下端に赤い斑紋が出るらしい。


写真A

写真Aはナガサキアゲハ。前翅の中央の、黒く縁取りのある鮮やかな赤い紋と、後翅の下部内側の白と赤との模様が、とてもシャレている。♀は真っ黒らしいけど。後翅が小さくて下部にツノ(尾状突起というらしい)の無いのが、全身の形の特徴。ほかのにくらべると来る回数がごく少なく、うちでは希少種よ。


写真B

写真Bはクロアゲハ。前翅の震えが激しくてほとんど写っていない(笑)。その地味だけどくっきりした筋目といい、後翅の玉虫色や青線といい、赤い紋といい、見飽きない美しさ。ありふれたチョウだけど、どうしてこんな造形なの、と感嘆せずにはいられない。

以上、夏休み研究発表でした!

残暑お見舞い申し上げつつ。