第223回 地球脱出計画 第2話・タダのひと会議

中山千夏(在日伊豆半島人)

ううむ、いろいろ考えさせる力作SFですなあ!

合意形成、大問題。

「いったいこの先、人類社会の合意形成は、どうなっていくのでしょうね」

というサコちゃんの問題提起に反射的に出てくる考え。
「合意形成はなされないままにモノゴトが進んでいくのではないか」
くら〜(TT)

そも合意というのは意見一致とは違う。
意見が違っても、ものごとを決定する過程に参加していれば、結果として合意を形成したことになる。

だから、強引な合意形成のやりかたとして、おざなりな「住民参加の説明会」なんか開いて、反対意見も聞きました、という体裁をつくって、原発建ててきたわけでしょ。
でもってこちらも、それが読める場合は、説明会そのものをボイコットして、合意形成はなされていない、という証明をしようとするわけでしょ。

とするとサコちゃんのSFは、非常に多難な状況ではあるものの、合意形成がマトモに行われている過程である、と言えるのではないかな。

しかし、現実には、合意形成の過程に加われるものが、どのくらいいるだろう。

サコSFに出てくるひとたち、あ、チナチンスカヤとサコリンスカヤは別として(しかしなんでロシア語なんやwww)、あ、動物たちも置くとして。
「後期高齢者・若者・主婦・自然保護団体の会長さん・会社員」
ううむ「自然保護団体の会長さん」がわずかに可能性があるだけじゃないかな。ほかは、まとめれば「タダのひと」なわけだけど、それは確実に、重要な政治決定についての合意形成過程からシャットアウトされている。

国民の合意形成の場である国会。
そこで国民の代表として合意形成する国会議員。

私は国会議員を経験した。
それでも議会の巧妙な仕組みのなかでは、おためごかしの合意形成を手伝わされるだけだった。国会議員でさえ、タダの無所属議員は合意形成過程から外される仕組みになっている。
そして、同じ「後期高齢者・若者・主婦・会社員」でも、タダのひとではないそれら(政府要人や高官、大企業幹部や大手マスコミ幹部、大組合や大医師会など大団体の幹部)、まとめて言えば「権力者」が国会の内外で合意形成している。

さて、タダのひとの多くは、そのことを感受している。
各種選挙の投票率が低いのは大半、そのせいだと思うね。
「こんなの合意形成の存在証明にすぎないだろ。うちらの意見なんか、ちゃんと反映されるわけない。なら、どうして私が貴重な時間を削らなければならない? 政策を吟味する、候補を吟味する、そして投票する、どれもこれも時間と労力の無駄だ」
そう考えないにしても、多くがそう感受しているのだと思う。

議会制民主主義のこの欠陥を補うものとして、住民投票や国民投票が考案された。
しかし、その実現はすこぶる難しく、仮に実現したとしても、その投票結果が「権力者」の意見と異なる場合は、まず政策に反映されない。
少なくとも日本ではそうだ。

おそらく世界会議でも同じだ。
タダのひとたちの大半は、地球を捨ててほかの星に移住したくはないだろう。
けれども世界の一握りの「権力者」がそうしたければ、そうなる。
彼らが原発を推進し、今もまだ推進しようとしている事実が、それを予言している…

 

サコリンスカヤ は〜い!

チナチンスカヤ はい、ご発言どうぞ。

サコ 要するに現行の議会制民主主義そのものに欠陥がある、と。私もそう思います。特に原発に関しては、国民の大半の意見は脱原発なのに、政権はかえって推進派が奪還するし、という経過を見ていると、そうとしか思えません。
そこで、ですね、では、どうします?

チナ わかんな〜い。

サコ ドタッ!

チナ だからね、それを少し考えてみませんか、みんなで。話を原発に絞って。

サコ ふむ。

自然保護団体の平会員 ええっと、平会員なんですが、とにかく放射性物質の始末が先決かと。

チナ あれ、会長さんでは?

平会員 すんません、ミエ張ってました^^;

サコ たは^^;

会社員 なるべく簡単なのにしてください。仕事、忙しいから。

チナ ふむ。

後期高齢者 わしゃヒマ。時間とられてもええけど、体きついのアカンで。

主婦 なるべくお金がかからないのにして。

若者 ダサいのダメだよ、すかっとかっこよくて、面白いのにしてくれよ。

チナ カツッ! してくれじゃなくて、自分でするのっ。

一同 ドタッ!

チナ ええ〜、ではまず、サコチンスカヤさん、アイデア出してくださいな!

(次回につづく!)