第215回 遺跡保存にもに歴史あり

中山千夏(在日伊豆半島人)

そうなの、鷹巣、何度か行きました。
当時文科省のエライさんだった岡村道雄さんの依頼で、まさに伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡の応援に。最初は、集会のステージで、町長と岡村さんと、鼎談したのよ。同い年三人ということで(^^ゞ

あそこは、当時の町長、岩川徹さんが岡村さんといっしょに、熱心に遺跡保存していたのね。
岩川さんともともだちになった。
彼は、福祉に大変熱心で、当時、鷹巣町の福祉行政は、全国的に評価されていて、岩川さん、あちこちから呼ばれて話に行っていた。

ところが、町村合併是非をかけた市長選で負けたんだけど(岩川さんは合併反対陣営)、相手勢力は、日頃から福祉や遺跡保護に力を入れる岩川政策を毛嫌いしていて、まあ、岩川さんが全国的に名を上げているのも気に入らなかったんじゃないの? 選挙に勝ったら、福祉はどおんと後退、合併(北秋田市になった)するに当たっては、鷹巣という町さえ廃町にして、名を消してしまったんだって。

岩川さん、がっくりきてたんだけど、立ち直って市長選にリベンジ。そうしたら今度は、選挙後、選挙違反で捕まった。
私が見たところ、ヒッカケられたね、完全に。
ほら、先日、厚生労働省の次官になった村木厚子さんが、冤罪逮捕されてものすごく長い間、留置されてた事件があったでしょ。その少しあと。

岩川さんも一年くらい留置された。
村木さんと違って無罪放免にはならず、有罪判決が出た。さっきも言ったけど、私は敵陣営にヒッカケられたと見ている。やられそうなひとなのよ、岩川さん。突貫小僧だから。

事件の詳細は、女性ジャーナリストの草分け的存在、大熊由紀子さんのサイト〔ゆき.えにしネット〕にあるから、ヒマな時、見てね。私が『週刊金曜日』に書いた記事も掲載されてる。

〔福祉の町・秋田県鷹巣町がつくり上げたもの・失ってしまったもの〕

なんかねえ。
岩川さんはこれだし、岡村さんは例の「神の手」事件で失脚するし。
大熊さんも…福祉関係者から信頼されている優れたライターなんだけど、昔、朝日新聞記者だったころ、原発支持の記事をさかんに書いたらしい。それを撤回しないというので、最近、非難されていた。

遺跡保護のほうも「失ったもの」が大きかったんじゃないかな。確か、関連の発掘研究をさらに続ける、と岩川町長は言っていたけど。どうなったんかな。

とまあ、遺跡保存にもさまざまな歴史あり、なんですね。
遺跡そのものには、もっともっとややこしい、人間社会の抗争、興亡の歴史があるわけですけどね。