第207回 ■小さな水力発電でいこう!■

中山千夏(在日伊豆半島人)

サコちゃん!ありがとおおおお!
青木教授を紹介してくれて。
ほんとにありがとう。

同じ大学への通勤バスで顔見知りになり、それで話すようになった、とおっしゃってた。
「私、千夏さんと同じで、おしゃべり大好きだから」ですって。はははは。
私よりひとつ年上、同世代だったよ。

青木豊明さん。
関西外国語大学、専門は環境科学。
マイクロ水力発電の研究、開発、普及に力をいれてきたが、2010年3月11日以降、にわかに注目されている。
話をお願いしたら、気軽に伊東へ出向いてくださった。ボランテイア精神にあふれたかたなのね、ほんの仲間内の教室みたいな集まりだったんだけど、とても熱心に、教えてくださった。

マイクロ水力発電、いいよお。
風力や太陽光にくらべて、何倍も効率がよくて環境に優しくて手軽で。
私たち、目の前明るくなって、マイクロ水力発電、研究して実行の方向にいってる。
でも、その話はまたにして、もうひとつ重要な話、したいの。

「マイクロ水力発電の設置は、私らは電気屋さんや土建屋さんに習って自分らでやりましたけど、そりゃ、最初から専門家に任せたほうが楽で確実です。現地にお金が落とせるしね。でも、みんなでいっしょにわいわいやる、これも楽しいんですよ。大事やと思います」
「ドイツは偉いですね。原発やめて、いろんな環境にいい発電を盛んにやっていますが、それがみんな、草の根。ウエからではないんですよ、シタから草の根で持ち上げていって、実現させてるんです。その点、日本はだめですね」
青木さんのこんな発言が印象に残った。
どちらも、私には馴染みの考えで、珍しくはなかった。でも、大学教授がこんな考えを熱心に説く、それがなんとなく印象的だったの。

青木さんの話を聞いてから、ネットで情報を探した。仕組みやなにかを自習しておこうと思ったのだ。情報が乏しいのは予想どおりだったが、うろつくうちに、はたと気がついた。

情報は決して少なくない、ただ、そこには一般人の声や、一般人にわかりやすい情報が皆無だったのだ。
そこにあるのは、官・財が官・財に向けた言葉、意見、判断だけだった。
またもや発電事業はウエだけで進んでいるのだ! 
原発と変わらない。当然、財界と官界との談合で、双方の都合の妥協で進路が決まる。

だから結局、孫さんの正義や大企業が損をしない、それどころか儲かるソーラーや大風車が躍進し、個人は特別な税金や固定買取費用負担のかたちでその儲けに寄与させられ、個人の懐と環境に優しいマイクロ水力発電などは、埋没してしまう。
その埋没の経過が、ネット情報の様子によく現れているのよね。

ここで、青木さんの言葉が、新たな意味を持ったわけ。
ウエに旨味がなく、シタの懐と環境に優しいからこそ、マイクロ水力発電は、草の根の上にしか実現しにくい。
青木さんは身に沁みてそれをご存知なのだろう。だからこそ、シタからウエヘの大切さを強調されたのだろう。

また私は改めて青木さんをありがたく思った。
相変わらず発電事業の情報は官・財に牛耳られ、知識も独占されている。
それは、多くの研究者が、官・財にしか接触しないからだ。草の根のひとと運動は、彼らに莫大な研究費や、高給と名誉を保証するようなポストを用意できない。研究者が官・財に流れる所以だろう。
だから私たちにとって、青木さんのようなボランテイア精神あふれる研究者は、とても貴重なのだ。

てわけで、サコ先生には感謝してます。
思えば、分野こそ違うけれど、サコちゃんも草の根ボランテイア型研究者。どうりで、バスのなかで話がはずんだわけだね!