第157回 ■車窓から■

中山千夏(在日伊豆半島人)

おおお! 実は私も今年は堪能したのです、雪景色。といっても、主として車窓からだけどね。

時は1月26日、早朝起きて伊東駅から電車に乗って、熱海で新幹線に乗り換えて関西方面へ。はい、すごくいいお天気でした。

新富士駅近辺で。1月26日8時27分。

やがて、わっ、雪だ!米原近辺。10時24分。

列車がとまってしまった・・・水気が多い雪です。10時33分。
ほっとしたことに、停車はほんの5分ほど。この日も翌日も、私たちの旅にはほとんど影響ありませんでした。

10時38分。

敦賀を出てしばらくしたら、ここは晴天の雪景色! 10時55分。

こうして降り立った芦原温泉駅も、宿泊&仕事場の坂井市も、みごと雪だった。
仕事はサコちゃんもふか〜い縁のある丸岡町で始まった「一筆啓上賞」の最終選考会。
サコちゃんはよくご存じのように、丸岡とは10年以上前からいろいろ縁があって、この賞の選考委員を引き受けてからは、毎年この時期に行っている。だけど、こんなにたっぷり雪を見たのは、そうね、10年ぶりぐらいじゃないかなあ。サコちゃんが言う雪害対策忘れちゃった現象も無理ないよ、ずっと何年も雪は少なかったものね。久々に見た雪をかぶった丸岡城、ステキだった。

それにしても、場所によって降雪もいろいろだと思った。車窓観察だとほんとに違いがよくわかるし、同じ坂井市でも、海際の三国は比較的雪がなくて、丸岡町は多い。道路を車で走っていると、左側はただの雪景色、右側はふりしきる雪で景色が霞んでいる、なんてこともあった。
場所によってひとが経験している天気は、違うんだ、と実感したです。九州では火山灰が降ってるしね。チュニジアやエジプトでは革命がおきてるしね。いやはや。

翌27日14時55分。芦原温泉駅前に、誰かが作った小さな雪だるまが。また列車に乗って移り変わる天気のなかを帰国しました〜。

ところで、われらの友人、岡村道雄さんの新著、読了しましたよ。前に読んだら感想言うねって約束してたよね。ちょうど日刊ゲンダイから、「週刊読書日記」という原稿を頼まれていたので、その一冊に取り上げた。そこんとこ抜粋します。

〔12月×日 『旧石器遺跡「捏造事件」』(岡村道雄著 山川出版社 1600円)読了。10年前の「神の手」事件で、犯人にも増して袋叩きにあった私の友人が著者。発売してすぐ出版社に注文したが、売れているそうで、一月待った。徹底的にカタイ分析と総括と反省。現状への警鐘もあって、反省にしてはエラそうだ、とまた言われるかもしれないが、学者で元文部省の上級官僚、おまけにあの負けず嫌いとしては、よくここまで反省した、と思う。「ホモ・フロレシエンシス」にも類似の問題が出てくる。「新発見」の魅力の大きさは、個人と仕組みの弱みを引きだしやすいものらしい。発掘の実際が克明にわかるのが、本書の真骨頂。スキャンダラスな興味には応えない。〕

あ、そうだ、同じコラムからもうひとつ抜粋するね。おんな組の理念に関係あるから。

〔1月×日 『死刑・いのち絶たれる刑に抗して』(日方ヒロコ著 インパクト出版社 2500円)読み始める。大部。詩人の著者とは、死刑廃止運動の長い仲間。私とは違って、神経を病むほど真剣に死刑囚とつきあってきた、その30年間の記録。私も時々出てくる。忘れていたことを思い出す。この本が存置論者を説得できるかどうかは別問題だが、少なくとも私は、読むほどに死刑廃止への決意が新たになる。国家による殺人、戦争と死刑には断固反対、とお屠蘇で誓う。〕

そうこうするうち、今年ももう2月。あせりそうになるけど、がんばってのんびりいくですb