第151回 ■吉野ヶ里バルーン■

中山千夏(在日伊豆半島人)

この写真見て!

きれい、というより、なぜだろう、なんか感動的でしょ。
佐賀で毎年秋に開かれているバルーンの世界大会。
私も一度、偶然ホテルの窓からこの景色を見て、なんともいえない気持になったことがある。
でね、今年はこれに、なんと吉野ヶ里歴史公園が参加したのです。

吉野ヶ里のスタッフが、何日か練習して免許取ってやったんだって。写真は、そのスタッフが送ってくれたもの。大企業のと較べると素朴だけれど、よくできたよね。なんか、数日間バルーンに乗り続けで、くたくたになったらしい。
これも、遺跡を一般に理解してもらおう、というスタッフの熱い思いです。

韓国のブロンズ像、なかなかいいなあ。
像は吉野ヶ里では再現家屋の内部にありますね。

これは去年の写真ですが、実はバルーン大会の一月ほど前の10月10日、今年も吉野ヶ里でシンポジウムがあって、出席してきました。あ、サコちゃんご承知だよね、出席依頼したけど、スケジュールがだめだった、と聞きました。

晴天の再現集落。古代人が歩いてますがむろんスタッフの変装です(^_^;

屋外の会場がとてもさわやかでいいのよね、ここのシンポ。客席も満杯でした。壇上は学芸員の折尾学さん。進行はミスター吉野ヶ里こと高島忠平さんが担当。
折尾さんとは付き合い、長い。忠平さんとも、発掘当初からだから、長くなるなあ。

忠平さん、最近は園内移動には、もっぱら備え付けの電動車椅子を利用してるんだって。楽でいいって(^_^;運転、うまかったよ。
ほかに、今は兵庫県立考古学博物館館長の石野博信さん。もう何度もごいっしょしてすっかり仲良しになった。佐賀県の文化財課の七田忠昭さんも、お馴染み。
静岡大学名誉教授の原秀三郎さん、奈良芸術短期大学講師の玉城一枝さん、最近注目されている纏向遺跡の発掘を担当している桜井市埋蔵文化財センター係長の橋本輝彦さん、彼らとは初顔合わせ。
なんと、同じカズエの玉城さん、サコちゃんのちょっと先輩なんだってね、大学で。鏡の専門家のようで。仲よくなったよ。またひとり、女性研究者と知り合えて、嬉しかった。

顔ぶれ見てお察しのとおり、特別展もシンポも、お題は「倭人伝の証明 吉野ヶ里と纏向」。どちらが「邪馬台国」か遺跡資料や倭人伝から考えよう、とのお馴染みの図式で、石野センセと橋本さんがヤマト説。あとはみんな九州説。

この図式に何回も参加しているうちに、よくわかった。研究者はみんなどこかで、つまり学校や行政の施設や発掘現場で「同じ釜の飯」を食っていて、おおむね仲良しなのね。そこで、ガチンコ勝負で自説を主張しようというひとは、まず少ない。本音はどっちでもいい、とにかく好きな発掘や研究を続けられればいい、なにもどっちと決めんでもいいやん、というひとがほとんど。ガチンコは、「同じ釜の飯」から外れた在野の研究者か、よほどの硬骨漢しかやらないのだ。

発掘や研究を続けるためには、しかるべき筋から資金を出させなければならず、そのためには考古学に陽が当たっているほうがいい。それにはマスコミ通じて一般大衆の興味をひくことも大切で、遺跡整備や邪馬台国論争はその大事なガジェットのひとつである。と・・・そこで学問的に行き過ぎるかどうかは、各研究者の良識に任されている、というところだろうか。

そう言えば、我等が友だちのみっちゃんこと岡村道雄さん、本を出したって新聞に出てた。早いねえ、「神の手事件」からもう10年なんだって。(旧)文化庁を退職する時、「(神の手)事件の真相究明が私の責務だ」と言っていたけど、究明できた範囲の報告と自己反省の本らしい。
『旧石器遺跡捏造事件』(山川出版社)ての、買って読むつもり。しっかり反省できてるといいなあ。