第104回 ■ハコフグ・ハグの話 2■

中山千夏(在日伊豆半島人)

「は〜い、ハコフグのハグよ。
この10月に伊豆半島人が
撮った写真、見てって」

「これね、クロシマウミウシを
写したそうだ。
下のしましまのやつね。
で、あとでよくよく見てみたら、
もうひとつ、上のほうにもピンクの
ウミウシが写ってた。
ちゃはははは、のんきな話だなあ。
ふむ、ピンクはヒロウミウシだね。
おらっちよりちび。10mmくらいさ」

「白いふさふさ、
ガーベラミノウミウシ」

 「黒いふさふさ、
 スミゾメミノウミウシ。
 ウミウシ好きだね、この人。
 動かないからな、
 撮りやすいんだろ」

「ふふ、
ニシキフウライウオさんか。
これもじっとしてるからな。
流れさえなければね」

「おっと失礼、よく動く被写体も
あるね。
伊豆半島人お気に入り、
粹な衣装のムスメベラ。
このかたは活発よ」

「だから、頭の赤や尻尾の
黄色まではっきり写せたの、
これが初めてなんだって。
写真見て感動してたよ、
うわあ、こういう色が
ついてたのかあって。ははは」

「これは人気のネジリンボウ、
カップルだよ。
あ、同居人、
もうひとりいるんだよ」

「穴から頭だけ出してるでしょ。テッポウエビさん。
ネジリンボウは見張り、
エビさんは家造り、
協力しあってるの」

「伊豆半島人はね、
水底に寝ころんで、サカナの群れを
ぼおっと見てるのが
好きなんだってさ。
サカナの雲って言ってるよ。
雲のほうは、大きいやつに
食われそうだから、
必死なんだけどね、たははは」