第98回 ■女性がしきる酒造り■

佐古和枝(在日山陰人)

「酒好きのわれわれ」って、そそそんな・・・サコは千夏さんの10分の1ほどしか飲まないですよぉ。でも、好きです、はい。
さて、本題です。お酒造りが女性の仕事だということは、記紀や風土記の伝承をはじめ、数多くの記録で確かめることができます。
お酒は、古代から神祭りに欠かせないものでした。そのお酒造りが、なぜ女性の仕事になったのか。もともと神祭りは、農民・狩猟民・漁民などが、それぞれの生業の収穫物・成果品を神様に捧げて感謝するものでした。だから当然、神祭りは男女によっておこなわれました。古代の神事にみえる奉納品の武器類は男性、布は女性の生業をあらわす象徴的な品物とみられます。また神饌の肉・魚介類をさばくのは男性で、田畑の収穫物を調理するのは女性の仕事。もちろん男性も農作業はするのですが、それぞれの生業における重要性を示す象徴的な役割分担です。そのお酒の原料は米ですから、女性の領域なんですね。

「刀自」については、以前紹介した義江明子さんが、酒造りと「里刀自」について、興味深いことを書いておられるので、断片的に紹介します。
「刀自」は、千夏さんの言うとおり、「女性のエライ人」への尊称です。奈良時代の豪族クラスの家は、「家長(イヘギミ)」の夫と「家室(イヘトジ)」の妻が、ともに一家を経営していました。家刀自の他、「寺刀自」、「里刀自」と呼ばれる女性もいて、それぞれ寺や村の組織運営に重要な役割を果たしたとみられます。福島県の荒田目条里遺跡で出土した木簡(9世紀半ば)には、郡司が「里刀自」に命じて農民36人を召しだしたことが書かれています。男性の「里長」とは別に、実際に農民を束ねていたのは「里刀自」だった様子がうかがえます。

なぜ女性の「里刀自」が農民を統率していたのか。農作業のなかでも、田植えと脱穀はもっぱら女性の仕事です。私的経営の場合、そういう女性たちを「家刀自」が仕切るのですが、地域の有力者たちは地域全体の祭りを主宰せねばなりません。とくに農耕神事には、儀式のなかに実際の農作業がともなうので、農民をしっかり掌握しなきゃできないし、それが経営拡大にも繋がる(^_^)v その地域の祭りのための酒造りも大変です。ということで、もともと女性農民を束ねたり、酒造りを仕切ったりしていた有力女性の役割を地域全体に拡大させたのが「里刀自」なんですね。
以上、義江さんの詳細な検証を乱暴にまとめてしまったので、上記の記述に誤解・間違いがあれば、サコの理解不足のせいです。
いずれにせよ、お酒と女性は切り離せない。男性に負けず劣らず、社会で重要な役割を果たす女性たちがいた。よかったですね〜、千夏さん!なんのこっちゃ(^_^;)