あんなこんなそんなおんな・・・・・昔昔のその昔 第10回

■土器と女性■

佐古和枝(在日山陰人)

世界各地の民族例の調査から、土器作りは圧倒的に女性の仕事です。日本でも、平安時代に、女性が土器作りをしていたという記録があります。
土器のもっとも重要な用途は、お鍋です。道具は、使う人が作るというのが本来の姿だったと思います。炊事をしない男性には、どんなお鍋が使いやすいのか、わかりませんものね。もっとも、土器作りも、商売になると男性も作るようになる。それは、料理、酒作り、裁縫・仕立てなども同じです。
土器は、女性の体そのものだと信じている民族調査の報告はいくつもあります。土器は、ナマで食べられないものを煮て食べ物、つまり命のもとを作り出します。おそらく、そういうことから、命を生み出す女性と重なって、そういう見方が生まれたのでしょう。
アメリカの原住民の社会では、土器作りの技術は、母から娘に伝えられます。土器を作る粘土をとりにいくところから女性の仕事なのだそうです。夜中にこっそり出かけるんですって。その時から土器作りの作業が終わるまで、男性に見られたら、土器作りは失敗する。土器作りの小屋は、神聖な女性の世界です。
縄文土器や弥生土器を女性が作ったという証拠はないのですが、縄文土器のなかに、出産の場面、つまり女性の体内から赤ちゃんが顔をだした瞬間を表現したのではないかといわれている土器があります。この顔、ほんとに赤ちゃんの顔のようです。こういう顔が作れるのは、やはり女性かなって思います。土器は命の源であり、土器そのものが女性の体なのだと、縄文人も思っていたことを物語っているのではないでしょうか。