心なごみませ  第52回

「指切り」

山元加津子(在日石川人)

 冷たいあられ混じりの雨の中、枯れ草の上に一輪白い花が咲いていました。まっすぐに生きるということをなぜか考えました。

 今日はゆいかちゃんの実習の最後の日。実習先で働いている卒業生のみっちゃんが今日も休み時間にはなしかけてくれました。
「かっこちゃん、今日、約束しようね。指切りやね」 「約束?どんな約束?」
「コンビニのちらしはたくさん持ってきたらいかん。怒られる。かっこ先生、したらだめやね」(みっちゃんはちらしたくさん取ってきて叱られちゃうのかな) 「はい、約束するよ」 「あんまりしつこく話しかけたらいけません」(話しかけたいことがいっぱいあるんだろうな)「はい、わかりました」 「アイスクリームは一日にひとつだけ食べる。たくさん食べると太る」 「気をつけるね」
「好き嫌いばっかりしとったらだめ。みんな命いただいてありがとうって食べないかんね」「本当やね。そうするわ」 「あんまり無理をせんようにね」 「いっぱい寝るのも大事やから」

 私はみっちゃんとの約束のお話しを聞いていて、なんだか途中から涙がとまらなくなりました。最初は、みっちゃんが誰かとした約束なのかなとそう思っていたけれど、だんだんとやっぱりみっちゃんは私に言ってくれているんだなと思いました。
 最後にみっちゃんはまたじっと私を見て言ってくれました。「みっちゃんとかっこ先生の約束、指切りしようね」「みっちゃんはかっこ先生、ずっと忘れんさかい、かっこ先生もみっちゃんをずっと忘れんとこうね」
 みっちゃん、私は約束するよ。私はみっちゃんのことを絶対に絶対に忘れないよ。いつもいつも心の中にみっちゃんがいてくれる、みっちゃんが輝いていてくれる。だから、私は元気になれるよ。みっちゃん大好きだもの。また会えるよ。 ゆいかちゃんのおかげでみんなに会えたよ。ありがとう。