心なごみませ  第50回

「きっとだいじょうぶ」

山元加津子(在日石川人)

 時折、悩みの中におられる方からメールやお手紙をいただくことがあります。昨日いただいたお手紙は、お子さんに重い障害があることがわかり、目の前が真っ暗になって、どうやっても先に進めないという気持ちでもう一年も暮らしているというものでした。
 同じようなお手紙を何度かいただくことがありました。私はそのたびに、「大丈夫。きっと大丈夫だから」とお話したくなります、もちろんいろんなご苦労もこれからされることでしょう。それでも、私は「大丈夫」とお話ししたくなるのです。子ども達のご家族の言葉を私はいつも思います。私は高等部に長い間います。そして卒業をされた子供さんのご家族ともずっと仲良しです。あるとき、優くんのおばあちゃんが話してくださいました。  

 優君は仮死で生まれました。お医者様に赤ん坊はほとんど助からないと思って欲しいと、もし万が一助かったとしても、重い障害が残ってしまうと言われたそうです。そのときおばあちゃんは「私は今生まれたばかりの赤ん坊より、自分の息子が可愛かったんや。赤ん坊が助かったとしても、重い障害を背負うことになるなら、息子の人生はとても暗くつらいものになるんじゃないかと心配でたまらなかった。そんなくらいなら、ここで、赤ん坊が死んでくれたほうがいいとそのとき、私は思ってしまったんや。先生、親ってね、勝手やね。子供のことが一番可愛い…そんなものだわ」おばあちゃんは目に涙をためて、優君の頭をなぜながら話して下さいました。「けれど、今は優がいてくれなかったら、こんなに仲良く家族がいられたやろうかと思うんよ。優はみんなの宝物。こんな可愛い子をそんなふうに思うなんて恐ろしいことやね。そやけどね、私は、そのときに考えたことをずっと覚えているから、この子がなおいっそういとおしいと思うんや」

 あーちゃんのお母さんも繰り返しおっしゃいます。「私は人に誇れることは何もないけど、たった一つ、すごいことをしたと胸を張って言えるのは、こんな宝物みたいないい子を産んだということやわ」私はお二人のお話をお返事に書かせていただこうと思います。